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(防災コンサルティングレポートVol.1)ローリングストックは、いざという時も普段から便利な生活の知恵
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近年、世界各地では地震や豪雨、猛暑など、多くの災害や異常気象が発生しています。また特にここ数年は日本でも、台風や大雨などによる気象災害が激甚化しています。雨の降り方が局地化・集中化しており、これまで大きな災害がなかった地域でも、この先は想定外の雨が降る可能性があります。日本国内で自然災害に対して安全な場所はどこにもないかもしれません。気象災害を意識した防災の必要性は、今後もますます高まると予想されます。

昨年(2019年)も台風や大雨による災害が発生し、その中でも令和元年台風第19号(以下台風19号)は東日本を中心に甚大な被害をもたらしました。その後の台風21号による大雨での二次災害、農業被害も深刻で、農林水産省によると農林水産被害額は3,000億円以上となり、2020年に入った現在も、一部地域では被害からの復旧・復興が進んでいない状況です。

今回は、その災害が発生する前、「普段からの災害に対する備え」について、考えたいと思います。

1.台風19号でのPOS状況

台風19号は、2019年10月12日に伊豆半島に上陸しました。図1は、9月3週目~台風19号が上陸した10月2週目の「液体ミルク」と「アルカリ乾電池」のPOS(注)データです。

(注)POSとは:販売時点情報管理(Point Of Sale system)の略称。個々の商品がいつ、いくらで、いくつ売れたかの情報を収集、管理するシステムのこと。

図1−1 台風19号上陸までのPOS状況「液体ミルク」 (「トクする!防災」プロジェクト調べ) 
図1−1 台風19号上陸までのPOS状況「液体ミルク」 (「トクする!防災」プロジェクト調べ) 
図1−2 台風19号上陸までのPOS状況「アルカリ乾電池」 (「トクする!防災」プロジェクト調べ) 
図1−2 台風19号上陸までのPOS状況「アルカリ乾電池」 (「トクする!防災」プロジェクト調べ) 

液体ミルクは、日本では昨年春に発売になりましたが、水が無い状況でも飲めることなどから、特に災害時には有用とされています。アルカリ乾電池は、停電時の電源の確保として欠かせないものです。どちらも、台風19号上陸前に需要が一気に伸びており、液体ミルクは、2019年10月9日から10日にかけて、10月1日の販売実績からの伸び率が、9日は約540%、10日は約1500%となりました。アルカリ乾電池においては、前年に比べて、2019年10月2週目の販売個数は約650%と、こちらも台風上陸前に集中的に購入されていたことが分かります。

今回のように、台風は数日前から、接近、上陸の可能性の予測が出され、「影響が出そう」という事は事前に認識できますので、自然災害の中でも事前の備え・準備を立てやすい現象ではあります。このため、台風19号の時も、台風上陸前に飲料水や食品などを多くのひとが数日分を買い求める状態となりました。関東地方を中心にスーパーマーケットの棚から特定の商品が品切れとなり、何店か店舗を巡ったひともいたのではないでしょうか。まとめ買いは、それだけで労力もかかりますし、大勢が一斉にまとめ買いを行うとなると、必要なものが手に入らない事態にもなりかねません。

2.備蓄をしていても、量が足りていない

「備蓄に必要な量の目安」は、一般的にはひとり最低3日分(東京都では1週間分推奨)とされています。水でいうと、ひとり1日3ℓ(生活用水含む)は必要とされていますので、4人家族でしたら、3ℓ×3日分×4人分=36ℓが必要です。水は常に家に最低でも36ℓが確保されていないといけない、ということです。

図2は、日本気象協会が推進している「トクする!防災」®( https://tokusuru-bosai.jp/ )が実施した、「家庭の備蓄状況」についてのアンケート調査(2018年)の結果です。この調査によると、備蓄には「3日分×家族の人数分が必要」ということは約半数(46.8%)が「知っている」と回答しましたが、回答者の中の79.2%の人は必要な量を備蓄出来ていない事が分かりました。また、水の備蓄については76%の人が、お米(アルファ化米、レトルトご飯)については62%の人が、備蓄に必要な量を少なく認識していました。

この結果からも、備蓄はしているが、多くの方が必要な量をまだまだ準備出来ていない現状が分かります。

Q1Q2
Q3Q4
図2 「家庭の備蓄状況に関するアンケート調査」 (「トクする!防災」プロジェクト 2018) 

3.ローリングストックは、いざという時にも普段にも便利な生活の知恵

2019年の台風19号の時のように、急な備蓄準備で困らないためにも、「トクする!防災」では、「ローリングストック」を活用した、日常の中での備蓄を推奨しています。

「ローリングストック」とは、非常用のためだけに食材や道具を備蓄するのではなく、普段から食べているものや消耗品を少し多めに買っておき、使ったら使った分だけ新しく買い足していくことで、常に一定量の食料や道具を家に備蓄しておく、循環型の備蓄方法です。(図3)消費しながら備蓄することができるので、備蓄用品を一定量に保ちながら、災害時にも日常に近い生活を送ることができます。

図3 ローリングストックの図 
図3 ローリングストックの図 

また、妊婦や乳児、高齢者や病気にかかっているひと、アレルギー体質のひとなど、災害時の食材支援の食事では配慮が必要な場合もあります。そのような場合でもローリングストックを活用して、普段から食べ慣れている食材や食べることができる食材などを備蓄しておくことで、災害時にも安心して食事ができ、家族の命や健康を守ることにもつながります。

このローリングストックは、食品だけではなく、トイレットペーパーや衛生品、乾電池やカセットボンベなど生活に必要な日用品でも実践できます。また、テントやランタン、寝袋といったアウトドアグッズも、普段はレジャーに、災害時には防災グッズとしてそのまま活用できます。
あらゆるものにおいて、日常と災害時の垣根を低くして、普段使っているものがそのまま災害時にも活用できる、という考え方が大事です。
例えばペットボトル一つとっても、懐中電灯の上に乗せると光が乱反射しランタン替わりに使えますが、それ以外にもどのような活用ができるかなど、家族や仲間で話してみることで、「防災」というテーマが、家族や地域でのコミュニケーションのきっかけにもなります。

ローリングストックを活用し、普段の生活の中で「防災」へのつながりを楽しみながら考えることが、これからの「防災」の視点かと思います。地球温暖化にともなう水害の激甚化、首都直下型地震の発生確率が今後30年で70%と言われているなど、あらゆる自然災害のリスクが高まっています。「防災」は非日常にあるリスクへの投資ではなく、日常生活の知恵であり、便利なものであり、家族や地域でのコミュニケーションの機会を増やし楽しむものである、ということを誰もが当たり前に思い実践する時代に変わっていく時ではないでしょうか。

一般財団法人 日本気象協会
メディア・コンシューマ事業部 コンシューマ事業課
「トクする!防災」プロジェクト プロジェクトリーダー
防災士
木村 知世子


これまでに、関西で朝の報道情報番組などアナウンサーとして活動し、その経験から日本気象協会で気象解説業務に携わる。
現在は「トクする!防災」のプロジェクトリーダーとして、企業や自治体とともに防災啓発活動の輪を広げている。
省庁、都道府県、自治体、企業で、普段の備えや避難に必要な知識や情報などをテーマとした防災セミナーを実施している。
立教大学社会デザイン研究所研究員「働き方における女性のライフストーリー研究会」メンバー
女性の視点・当事者の語りから背景にある社会を見つめ直し、
「語り/物語」による越境と社会創発プログラムを開発、防災分野への社会実装を目指している。

「トクする!防災」プロジェクトとは
日本気象協会が推進する、“必要だとは思っているけれど、なかなか実践できない防災アクション”に対し、ちょっとしたおトク感や気軽さをプラスする取り組みです。日頃から防災対策への興味、関心を高め、最終的に自分や家族の身を守ることができる備えをしながら、安心につなげていくことを目指しています。
公式ウェブサイト https://tokusuru-bosai.jp/

トクする!防災
・「トクする!防災」のロゴマークは日本気象協会の登録商標です
・製品名、サービス名などは一般に各社の商標または登録商標です

PDFダウンロード:日本気象協会防災コンサルレポートVo.1_

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