日本気象協会、AI鳥類識別システム「AI Bird」を開発 ~AIを使ったオジロワシとオオワシを他の鳥類と見分ける技術にて 国内希少野生動物と風力発電事業の共存に貢献~
Press Release
一般財団法人 日本気象協会(本社:東京都豊島区、理事長:長田 太、以下「日本気象協会」)は、4Kカメラで撮影し保存した映像記録から、環境省が指定する国内希少野生動物であるオジロワシとオオワシをAIの活用により識別し、他の鳥類から区別するシステム「AI Bird(アイバード)」を開発しました。飛翔する野生の鳥類の映像からAIを使って種類を識別する仕組みは、国内初となります。
■「AI Bird」の概要
これまで、AI技術にて飛翔中の特定種を識別するシステムは、国内には存在しませんでした。「AI Bird」は、4Kカメラで撮影した飛翔映像から、特定の鳥類をAIで識別する初めてのシステムです。今回「AI Bird」に組み込んだAIは、環境省が指定する国内希少野生動物で、北海道に生息する希少な鳥類のオジロワシとオオワシを識別できるように学習をしています。
日本気象協会は「AI Bird」の試験機を使い、オジロワシやオオワシが生息する北海道苫前郡苫前町で野外実験を行ったところ、再現率※94%という結果を得ました。
※1再現率:実際に検出対象(ここではオジロワシ及びオオワシ)が映っている映像の内、AIが正しく検出した割合
なお誤判定は、主に背景映像を識別することで生じるため、同じ場所で撮影された映像を繰り返し学習させることにより、識別の精度を高めることが可能です。
なお、「AI Bird」のシステムには、東京大学先端科学技術研究センター飯田研究室(飯田誠 特任准教授)および情報理工学系研究科苗村研究室(苗村健 教授、川上玲 客員准教授、吉橋亮太)が研究する「AIのディープラーニングを用いた、映像認識による野鳥の自動検出」の成果を用いています。
■システム開発の背景
風力発電の普及が進む中、野鳥が風力発電機のブレードに衝突するバードストライクの防止に向けた取り組みが求められています。これまで、希少な鳥類の定量的な調査は、目視による識別により行われていました。この方法は、人による直接観察のため、長期間の連続した観測が困難となるなどの課題がありました。今後、風力発電の導入はさらに増えると予想されており、希少な鳥類の定量的な把握を効率的に行う技術開発の必要性はさらに高まるものと考えられます。
■今後の展望
日本気象協会が開発した「AI Bird」の利用が、風力発電事業の計画時の調査や運用時のバードストライク監視の現場で進むことで、希少な鳥類の生息把握に関する信頼性向上が期待できます。「AI Bird」が本格稼働することにより、国内希少野生動物と風力発電事業の共存に貢献できると考えています。
今後はAI Birdの観測でデータを積み重ね、精度及び信頼性を高め、リアルタイムの識別に向けた処理速度の向上や識別できる鳥類の種類を増やし、2023年ごろを目途に製品化を進めていきます。
■開発体制
全体統括 :一般財団法人 日本気象協会
技術指導 :東京大学先端科学技術研究センター飯田研究室(飯田誠 特任准教授)
東京大学情報理工学系研究科苗村研究室(苗村健 教授、川上玲 客員准教授、吉橋亮太)
システム開発:株式会社リーデッジテクノロジー(代表 片山 敦)
以上
PDFダウンロード:【日本気象協会報道発表】AIによる希少な鳥類種の自動識別システム開発_