(防災レポート Vol.10)梅雨前線に伴う今後の大雨の見通し(速報)
Report
日本気象協会は、梅雨前線に伴う今後の大雨の見通し(7月1日13時時点)に関する情報を、防災レポート(速報)として発表します。
ポイント
・伊豆諸島北部では既に、近年の過去最大雨量を大きく上回っており、危険な状態が続く。
・7月3日(土)かけて東海地方・関東地方の太平洋沿岸を中心に大雨となり、過去最大雨量を 上回る豪雨の可能性があり、災害発生危険度が極めて高い。
梅雨前線が本州の太平洋側に停滞し、広い範囲で大気が非常に不安定な状態が続いています。伊豆諸島北部では記録的な大雨となっており、本日12時時点の最大24時間雨量では200ミリを超える地点が出ており、これまでの観測データの既往最大値(過去の最大値)に比べて120%を超えているところもあります(図1)。
気象庁は7月1日8時59分に「顕著な大雨に関する東京都気象情報」を発表し、伊豆諸島北部では、土砂災害や洪水による災害発生の危険度が急激に高まっています。
東海地方・関東地方ではこれから明後日3日にかけて大雨が予測されています。避難などされているかたがたは、引き続き安全な場所へとどまることが必要です。また、復旧作業にあたられるかたがたは、今後の雨量情報を注視していただき、身の安全の確保を最優先に対応にあたってください。
活発な活動を続ける梅雨前線は、本州の太平洋側に沿うようにのびていて、水蒸気を大量に含んだ暖かく湿った空気が本州に流れ込んでいます。明日2日(金)から明後日3日(土)にかけて、東海地方・関東地方では太平洋沿岸を中心に大雨が予想されています。
日本気象協会独自の「JWAアンサンブル雨量予測」で算出している「過去最大雨量との比(既往最大比)」(図2)を見ると、24時間雨量の既往最大比で、愛知県・静岡県・神奈川県の太平洋沿岸部で過去最大値に匹敵または超える雨量となることが予想されています。そして、72時間雨量の既往最大比では、既往最大比が100%を超える範囲が東海地方・関東地方の太平洋側に広く広がっています。特に、静岡県周辺では既往最大比が150%を超える可能性がある地点があります。これは、現在降っている雨が断続的に3日にかけて続く可能性があることを示しています。
日本気象協会が静岡大学牛山素行教授との共同研究で調査した、平成30(2018)年7月豪雨時の降水量と犠牲者の発生の関係(※)によると、犠牲者が発生した地点のほとんどが既往最大比100%以上となっていました。また、既往最大比150%前後から犠牲者の発生数が急増する可能性が示されており、災害発生危険度が極めて高いことを示していると言えます。
日本気象協会が過去の被害データと既往最大比の関係を元に、被害の推計を行ったところ、平成18年7月豪雨や平成24年九州北部豪雨に匹敵する被害が発生する可能性があります。
梅雨末期の大雨の特徴として、梅雨前線の位置が南北に変化することによって雨量がそれほど増えない場合もあれば、さらに雨量が増える場合もあるなど、予測に不確実性があります。最新の気象情報を確認し、厳重な警戒を続けてください。
※本間基寛・牛山素行:豪雨災害における人的被害ポテンシャルの推定に関する一考察 ―平成30年7月豪雨を事例に―,第38回日本自然災害学会学術講演会講演概要集,pp.47-48,2019
本情報は2021 年7 月1 日 13 時時点の予測資料から作成したものです。最新の気象情報をご確認ください。
※日本気象協会の天気予報専門メディア「tenki.jp」では、「警報・注意報」「地震情報」「津波情報」「火山情報」「台風情報」などの防災情報(https://tenki.jp/bousai/ ) を24時間365日提供しています。
本間 基寛(ほんま もとひろ) 一般財団法人 日本気象協会 社会・防災事業部 専任主任技師 北海道生 北海道大学理学部卒業,東京大学大学院理学系研究科修士課程修了 京都大学防災研究所特任助教(非常勤) 静岡大学防災総合センター客員准教授(非常勤) 博士(工学) 技術士(建設部門:河川、砂防及び海岸・海洋) 気象予報士 |
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