防災レポート2024 Vol.3 台風第5号に伴う今後の大雨・災害の見通し(第3報)
Report
日本気象協会は、台風第5号に伴う今後の大雨と災害の見通し(8月11日12時時点)に関する情報を、防災レポート(第3報)として発表します。
ポイント
・台風第5号は進路を次第に西寄りに変え、8月12日(月)には東北地方に接近、上陸、記録的な大雨となるおそれがある。
・台風の進む速度がゆっくりであり、東北地方の太平洋側で雨量が多くなる予想。特に岩手県では48時間雨量が400 mmに達し、既往最大比が150%を超える可能性がある。
・台風は東北を横断し、日本海へ進む見込み。河川の氾濫や土砂災害に厳重な警戒が必要である。
台風第5号は8月11日(日)12時現在、日本の東海上にあり、北西へゆっくりとした速さで進んでいます。中心気圧は980 hPa、中心付近の最大風速は25 m/sです。このあと台風は進路を西寄りに変え、東北地方へ接近し、上陸するおそれがあります。
日本気象協会独自の「JWA統合気象予測(※1)」では、12日(月)24時までの48時間雨量が岩手県の多いところで400 mmに達すると予測しました。予想される雨量となった場合、これまでに観測された雨量の最大値との比(既往最大比※2)が150%を上回る可能性があります(図1)。日本気象協会と静岡大学牛山素行教授との共同研究の結果(※3)によると、既往最大比が100%になると犠牲者が発生しはじめ、150%を超えると犠牲者の発生数が急増する可能性があることがわかっており、災害発生危険度が極めて高いことから厳重な警戒が必要です。
東北地方の太平洋側に上陸した台風として、2016年台風第10号があります。この台風は日本の南海上を西に進んだ後、北東に向きを変えて、小笠原近海を経由して、岩手県に上陸しました。岩手県沿岸部を中心に雨が降り、多いところで48時間雨量が300 mmを超える大雨となりました(図2)。今回の台風第5号の進路は、この2016年台風第10号の進路と類似する可能性があります。2016年台風第10号に比べて今回の台風は進行が遅い予想となっていることから、当時を上回る降水量となるおそれがあります。
東北地方太平洋側には台風接近前から北東~南東方面からの暖かく湿った空気が流れ込む予想で、10日の夜から東北地方太平洋側で雨が降り始めています。台風本体の雨雲による大雨は12日になる予想で、日中から夜間にかけての時間帯には雨脚が強まるでしょう(図3)。大雨が長く続くことにより、河川の氾濫や土砂災害に厳重な警戒が必要です。岩手県、宮城県、秋田県では台風本体の接近に伴い雨量が急激に増えるおそれがあります。とくに岩手県沿岸部では12日の日中の時間帯にかけて、岩手県内陸部や宮城県、秋田県では12日の夜間にかけて強雨となることが予想されています。雨量が多くなる前からの早めの行動を心掛けてください。
最新の気象情報を確認するとともに、東北地方の太平洋側を中心に大雨災害に備えてください。
本情報は2024年8月11日12時時点の予測資料から作成したものです。最新の気象情報をご確認ください。
※1 JWA統合気象予測:https://www.jwa.or.jp/news/2023/02/19157/
※2 既往最大比:解析雨量が1kmメッシュ化された2006年5月以降に観測された雨量の最大値との比のこと
※3 本間基寛,牛山素行:豪雨災害における犠牲者数の推定方法に関する研究,自然災害科学,Vol. 40,特別号,pp. 157-174,2021.
※4 気象庁台風経路図 平成28年(2016年):https://www.data.jma.go.jp/yoho/typhoon/route_map/bstv2016.html
※日本気象協会公式の天気予報専門メディア「tenki.jp」(https://tenki.jp/)では、「警報・注意報」「地震情報」「津波情報」「火山情報」「台風情報」などの防災情報を24時間365日提供しています。
遠藤 理(えんどう さとる) 一般財団法人 日本気象協会 社会・防災事業部 防災マネジメント課 水防グループ 気象予報士 |
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