防災レポート2024 Vol.4 台風第10号に伴う今後の大雨・災害の見通し(第1報)
Report
日本気象協会は、台風第10号に伴う今後の大雨と災害の見通し(8月26日12時時点)に関する情報を、防災レポート(第1報)として発表します。
ポイント
・強い台風第10号は8月29日以降、西日本に接近し、西日本・東日本を縦断するおそれがある。
・台風の進む速度がゆっくりであり、西日本から東日本の太平洋側を中心に記録的な雨量となるおそれがある。広い範囲で河川の氾濫や土砂災害に厳重な警戒が必要である。
・29日にかけて宮崎県では48時間雨量が600 mmを超え、既往最大比が150%を超える可能性がある。その後、31日にかけて四国南部、近畿南部、東海地方でも大雨の可能性がある。
台風第10号は8月26日(月)12時現在、日本の南の海上にあり、西北西へ時速約20kmで進んでいます。中心気圧は980 hPa、中心付近の最大風速は35 m/sです。このあと台風は29日(木)以降に西日本に接近し、西日本・東日本を縦断するおそれがあります。
日本気象協会独自の「JWA統合気象予測(※1)」では、28日(水)0時から29日(木)24時までの48時間雨量が九州地方の多いところで600mmを超えると予測しました。予想される雨量となった場合、これまでに観測された雨量の最大値との比(既往最大比※2)が150%を上回る可能性があります(図1)。日本気象協会と静岡大学牛山素行教授との共同研究の結果(※3)によると、既往最大比が100%になると犠牲者が発生しはじめ、150%を超えると犠牲者の発生数が急増する可能性があることがわかっており、災害発生危険度が極めて高いことから厳重な警戒が必要です。
西日本から東日本にかけての太平洋側には台風に伴う暖かく湿った空気が流れ込む予想で、28日(水)から雨が降り続く予想です(図2)。大雨が長く続くことにより、河川の氾濫や土砂災害に厳重な警戒が必要です。九州地方では、28日(水)から29日(木)にかけて、四国地方から東海地方では29日(木)から31日(土)にかけて大雨となることが予想されています。
今回の台風の特徴は、進む速度がゆっくりであることです。そのため、同じようなところで長時間にわたって雨が降り続くことが予想されています。台風が西日本から東日本にかけて縦断するような進路となった場合、九州東部や四国南部、近畿南部や東海地方といった普段から雨量が多いところであっても、これまでの観測最大値を上回るような記録的雨量となるおそれがあります。西日本から東日本の太平洋側を中心に、大河川も含めた多くの河川での氾濫、広域での土砂災害の多発に警戒が必要です。雨量が多くなる前からの早めの行動を心掛けてください。
なお、台風の進路予報にはまだ幅があります。台風の進路によっては雨量の予測が大きく変化する可能性がありますので、最新の気象情報を確認してください。
本情報は2024年8月26日12時時点の予測資料から作成したものです。最新の気象情報をご確認ください。
※1 JWA統合気象予測:https://www.jwa.or.jp/news/2023/02/19157/
※2 既往最大比:解析雨量が1kmメッシュ化された2006年5月以降に観測された雨量の最大値との比のこと
※3 本間基寛,牛山素行:豪雨災害における犠牲者数の推定方法に関する研究,自然災害科学,Vol. 40,特別号,pp. 157-174,2021.
※日本気象協会公式の天気予報専門メディア「tenki.jp」(https://tenki.jp/)では、「警報・注意報」「地震情報」「津波情報」「火山情報」「台風情報」などの防災情報を24時間365日提供しています。
遠藤 理(えんどう さとる) 一般財団法人 日本気象協会 社会・防災事業部 防災マネジメント課 水防グループ 気象予報士 |
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