防災レポート2024 Vol.5 台風第10号に伴う今後の大雨・災害の見通し(第2報)
Report
日本気象協会は、台風第10号に伴う今後の大雨と災害の見通し(8月27日12時時点)に関する情報を、防災レポート(第2報)として発表します。
ポイント
・非常に強い台風第10号は8月29日以降、西日本に接近し、西日本・東日本を縦断するおそれがある。台風の進む速度がゆっくりであり、西日本から東日本の太平洋側を中心に記録的な雨量となるおそれがある。
・九州南部、四国地方では31日までの72時間雨量が800 mmを超え、既往最大比が150%を超える可能性がある。中国、近畿、東海地方でも9月2日にかけて大雨の可能性がある。
・広い範囲で大規模河川の氾濫、地すべりなどの大規模土砂災害が発生する可能性がある。
非常に強い台風第10号は8月27日(火)12時現在、奄美市の東約110kmにあり、西北西へゆっくり進んでいます。中心気圧は950 hPa、中心付近の最大風速は45 m/sです。このあと台風は29日(木)以降に西日本に接近し、西日本・東日本を縦断するおそれがあります。
日本気象協会独自の「JWA統合気象予測(※1)」では、31日(土)までに予想される72時間雨量が九州地方や四国地方の広い範囲で800mmを超え、最も多いところでは1300mmに達すると予想しました。予想される雨量となった場合、これまでに観測された雨量の最大値との比(既往最大比※2)が150%を上回る可能性があります(図1)。日本気象協会と静岡大学牛山素行教授との共同研究の結果(※3)によると、既往最大比が100%になると犠牲者が発生しはじめ、150%を超えると犠牲者の発生数が急増する可能性があることがわかっており、災害発生危険度が極めて高いことから厳重な警戒が必要です。
西日本から東日本の太平洋側には、台風に伴う暖かく湿った空気が流れ込む予想で、28日(水)から雨が降り続く予想です(図2)。大雨が長く続くことにより、河川の氾濫や土砂災害に厳重な警戒が必要です。九州地方では、28日(水)~30日(金)にかけて、四国地方から東海地方では29日(木)~9月1日(日)にかけて大雨となることが予想されています。
今回の台風の特徴は、進む速度がゆっくりであることです。同じようなところで長時間にわたって雨が降り続くことが予想されています。台風が西日本から東日本にかけて縦断するような進路となった場合、九州南部や四国地方、近畿南部や東海地方といった普段から雨量が多いところであっても、これまでの観測最大値を上回るような記録的大雨となるおそれがあります。西日本から東日本の太平洋側を中心に、大河川も含めた多くの河川での氾濫、広域での土砂災害の多発に警戒が必要です。雨量が多くなる前からの早めの行動を心掛けてください。
表1は、九州地方、四国地方の国管理河川のうち、河川の流域平均雨量の予測値が計画規模降雨(※4)を超えているものを示したものです。
九州地方では29日(木)~30日(金)にかけて、四国地方では30日(金)~31日(土)にかけて、国管理の大きな河川を含めた多くの河川で現状の整備水準を超える規模の雨量が予測されており、氾濫が発生するおそれがあります。市町村が作成している洪水ハザードマップなどを早めに確認し、浸水の可能性や避難する場所・経路などを把握するとともに、避難への備えを行ってください。なおここでは示していない河川でも氾濫が発生するおそれもありますので、最新の気象情報や河川情報を確認するようにしてください。
また、大雨が予測されている九州南部や四国地方は、深層崩壊の頻度が高いと言われている地域に該当します。これらの地域では、降り始めからの総雨量が1,000mmを超えるおそれがあり、地すべりなどの大規模な土砂災害が発生する可能性があります。山間部を中心に、道路の寸断による集落の孤立や、河道閉塞による土砂ダムの形成などのおそれがあります。厳重に警戒してください。
台風の進路予報にはまだ幅があります。台風の進路によっては雨量の予測が大きく変化する可能性がありますので、最新の気象情報を確認してください。
本情報は2024年8月27日12時時点の予測資料から作成したものです。最新の気象情報をご確認ください。
※1 JWA統合気象予測:https://www.jwa.or.jp/news/2023/02/19157/
※2 既往最大比:解析雨量が1kmメッシュ化された2006年5月以降に観測された雨量の最大値との比のこと
※3 本間基寛,牛山素行:豪雨災害における犠牲者数の推定方法に関する研究,自然災害科学,Vol. 40,特別号,pp. 157-174,2021.
※4 計画規模降雨:河川整備の目標とする降雨。この規模の雨が降っても氾濫(はんらん)が発生しないように治水対策が進められている。その降雨量は大雨事例を基に、確率計算により求める方法が一般的で、1/100~1/200確率降雨量としている。
※日本気象協会公式の天気予報専門メディア「tenki.jp」(https://tenki.jp/)では、「警報・注意報」「地震情報」「津波情報」「火山情報」「台風情報」などの防災情報を24時間365日提供しています。
平田 航(ひらた わたる) 一般財団法人 日本気象協会 社会・防災事業部 防災マネジメント課 危機管理支援グループ グループリーダー 気象予報士 RCCM(河川、砂防及び海岸・海洋) |
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