CASES航路選定と安全性確保に貢献し、遠洋漁船の・・・
株式会社臼福本店

航路選定と安全性確保に貢献し、遠洋漁船の信頼性が向上

株式会社臼福本店代表取締役社長 臼井壯太朗さん
第一昭福丸船長 小山涼太さん
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―日本気象協会の「POLARIS」 導入で運航性能効率化へ―
計画航路上の気象条件をリアルタイムで運航に反映し、台風や低気圧を回避しなければならない状況での頼れるツールで助かっています。

気象海象データサービスPOLARIS Navigation(ポラリスナビゲーション)の漁船への導入のいきさつを教えて下さい。


代表取締役社長 臼井壯太朗さん

臼井さん  POLARIS Navigationを搭載しているのは今年(2020年)3月に就航した遠洋マグロ延縄船「第一昭福丸」です。私は常日頃から「日本の漁業を世界で戦える漁業にしなくてはいけない」と感じているのですが、この船に POLARIS Navigationを搭載することにした理由はふたつあります。
ひとつは国がすすめる船舶の省エネルギー走航にソフト面で対応するためです。「第一昭福丸」は水産庁の漁業構造改革総合対策事業の補助金を活用して建造しましたが、省エネ効果が交付要件でした。そこで船形やプロペラの形に工夫を凝らすなどしたのですが、POLARIS Navigationもその一環です。もっとも補助金申請の段階ではまだ導入の予定はありませんでした。
二つ目の理由は、英インマルサット社の高速・大容量インターネット通信 FX(Fleet Xpress フリートエクスプレス)の導入でしょうか。マグロ漁船のイメージを打ち壊すような「人が集まる魅力ある船」にしようと考え、国内の漁船として初めて陸上並みの高速インターネット環境を整備したのです。そのとき通信会社からの提案もあり、POLARIS Navigationの導入を決めました。陸上で気象情報を見るのは当たり前です。「船の上とは言え、できるだけ陸上に近い生活環境を整えたい」との考えから決断しました。

POLARIS Navigationの使い勝手はいかがでしょうか?

臼井さん  出港に間に合わせるためにPOLARIS Navigationを正式リリースの前に搭載してもらいました。そのため、我々陸上のスタッフが POLARIS Navigationの使い勝手について十分理解し切れていない状況で、船員にも半ば運航中に馴れてもらうような形での導入開始でした。

小山さん  現在私はアイルランド沖を操業中なのですが、出港前、気仙沼で日本気象協会の担当者から説明を受けました。計画航路上の気象条件をリアルタイムで運航に反映させられる点、それを1台のPCで管理・運用できる点が便利だと思いましたね。実際に使ってみて普段からPCや航海計器の操作に慣れていれば、それほど習得に時間はかからないと感じました。


臼福本店のFacebookより

POLARIS Navigationの導入前は気象や海象をどのように予測していたのでしょうか?

小山さん  FAXで定時配信される気象図が頼りでした。海域ごとの気象情報を必要な時に専用のページから取っていました。

実際に導入されてみていかがですか。

小山さん  事前におおよその航路を作っておけば対応した航路案を提示してくれるので、航路選定の手間が省けるのがいいですね。
気象の把握も以前より簡単になりました。時間を追って知りたい範囲の気象変化を確認できるので、低気圧などの進路予想や風、波の変化を見て避航ルートが選定しやすくなり、助かっています。不測の荒天に対する備えとしても有効だと思います。天候や航海に関する情報とそれを得るための設備は多いに越したことはありません。


臼福本店のFacebookより

臼井さん  船主からみたメリットは安心感ですね。やはり船の人たちに安全に航海してもらいたいですから。
ただ、まだ機械を使いきれていないと感じます。出港から1年経って船が帰ってきたときに、船長から拡張性も含めた新しい使い方を提案してもらえれば、尚良いかなと思います。まだ航海中で燃費効率や排出ガスの数値が上がっていないので検証出来ていませんが、できるだけコストを下げたいウィズ・コロナの状況下で巡り合わせの良い導入が出来ました。

漁の最中も活用されているのでしょうか?

小山さん  機械は状況に応じて使い分けています。POLARIS Navigationを使っているのは漁場への航海中で、操業中はつかっていません。

漁船の航路は商船と全く違います。航路のみならず走り方も船形も異なります。このデータは貴重ですね。

臼井さん  操業中のデータはなかなか外部に出せませんが、航海中のものはオープンにしても良いと思います。 POLARIS には過去の再解析データを提供できるPOLARIS Hindcastサービスもありますから、毎航海後のデータをまとめても面白いでしょうね。
それから操業中のプランクトンの発生率と位置情報をひとつにまとめて、漁業用の POLARIS をつくるのも良いかもしれません。


日々の業務に訪船は欠かせない。船橋にて。

今後 POLARIS に対して望むことはありますか?

臼井さん  海事情報を提供する各社のサービスが縦割りで、それぞれ出来ることが違います。例えば POLARIS Navigationは海潮流の流れが分かるが、水温※は分からない。新船を建造するとき関係各社が膝をつき合わせてコラボレーションできたら面白いと思います。
「第一昭福丸」には高性能な通信機器があります。皆様の協力を仰ぎながら、うちの船を使ってなにか新しいことを一緒にやっていただきたいですね。

※POLARIS Hindcast(過去の再解析データ提供サービス)では水温情報も提供しています。

* 小山船長はアイルランド沖で操業中のためメールでインタビュー
* 取材時期 2020年10月
* 記載内容(役職、数値、固有名詞等)はすべて取材時の情報です。