(商品需要予測コンサルティングレポートVol.3)2019年は雨が多い夏に 〜夏商材は前年からの反動減に注意〜
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2018年の夏は各地で40℃前後に達する歴史的な猛暑となり、ドリンクや熱中症関連商品を中心に夏商品の欠品が相次ぎました。一方、2019年の7月から8月は昨年のような猛烈な暑さの日は少なく、雨が多くなると予想されています。夏商材を前年並みに製造・発注をした場合は、売れ残りが発生する可能性もあり、気象情報の有効活用が不可欠といえるでしょう。
プロフェッショナルパートナー’sレポート3回目の今回は、企業のみなさまに、最新の夏の見通しと、日本気象協会独自の気温予測に基づいた商品需要について解説します。
1. 2019年は雨の多い夏に


<ポイント①> 雨の日多く、夏空続かず
図1は、気象庁が5月24日に発表した7月から8月の季節予報※を元に日本気象協会が作成した図です。
今年の7月から8月の平均気温は、沖縄・奄美で平年並みか高いほかは、ほぼ平年並みと予想されています。また、降水量は、7月は関東から九州で、8月は北海道から九州にかけて平年並みか多いと予想されています。
今年の夏は、晴天と暑さをもたらす太平洋高気圧の勢力が弱いために、梅雨明けが遅れたり、梅雨が明けたとしても、安定した夏空が続かず、にわか雨や雷雨があるなど雨の多い夏になる可能性があります。
また、オホーツク海高気圧が発生した場合は、関東から北海道の太平洋側を中心に、日照不足や低温に見舞われる可能性もあるでしょう。
なお、「平年並み」とは、1981年〜2010年の平均的な水準を意味します。地球温暖化等が進んだここ10年の夏の気温と比較すると、「平年並み」は体感として少し低く感じられるといえます。したがって平年並みと予想される今年の夏は、近年の中では暑い日が少ない夏と捉えるのが適切でしょう。
※季節予報:気象庁より発表される、1カ月や3カ月など期間全体の大まかな天候を3つの階級に分けて出される予報
<ポイント②> 気温の変動に注意
季節予報はあくまでも月の平均的な気温を予想したもので、実際には気温は上下します。近年暑い夏が増える中で、今年の7月8月の予想気温がほぼ平年並みまで押し下げられている根拠は、雨をもたらす前線の停滞や、低温をもたらすオホーツク海高気圧の発生が懸念されるからですが、これらは数日から10日程度の現象です。このため、これらの現象が現れない期間は、厳しい暑さに見舞われる可能性があります。数週間に渡り猛暑が続いた昨年の夏とは違い、今年の夏は暑い期間もあれば涼しい期間もあるといったように、気温の変動が大きくなるでしょう。こうした気温の変動は、季節予報では予想が難しく、可能性が見えてくるのは数週前になってからです。
最適なオペレーションを行うためには、気象情報の活用が不可欠です。
2. 夏商材は昨年からの反動減に注意


※インテージSRIデータより日本気象協会が独自に算出
図2は、2019年7月の全国における売り上げ予想(前年同月比)です。
図2[上]は、売り上げが減少傾向と予想される商品で、夏商材の多くが、前年からの反動減に要注意といえます。とくにスポーツドリンクのほか、美容&健康ドリンクや麦茶、ミネラルウォーター類など、ドリンク系の商品は影響を受けやすいでしょう。かき氷にかける練りミルクやアイスクリームのほか、麺類も売り上げが減少傾向の予想です。また、昨年(2018年)の夏は猛暑による外出控えなどが影響し、制汗剤や日焼け止め、殺虫剤が伸び悩みましたが、今年の夏は雨が多いことが影響し、売り上げが減少傾向となる可能性があります。
一方、図2[下]は売り上げが増加傾向と予想される商品です。シチューやレギュラーコーヒーなどの温かい飲み物に続いて、3位にランクインしたのはチョコレートでした。例年、暑い夏は食欲の減衰により、カロリーが低くさっぱりとしたものが売れます。逆に気温の低めな夏は、カロリーの高い商品が暑い夏に比べて売れやすい傾向があります。今年の7月も、あまり気温が上がらない予想のため、チョコレートなどの甘い物や、ホイップクリーム、バターといった脂質の高いもの、煎餅や菓子パン、食パンといった炭水化物などは売り上げが増加傾向と予想されます。
さらには、寒暖差で体調を崩す人が増える可能性があり、総合感冒薬も前年より増加傾向と予想されます。
3. 気象情報を活用したオペレーションを
ここで示した7月~8月の予報は、あくまでも全国・ひと月ごとの大まかな傾向です。実際には気温は上下し、地域によっても異なるでしょう。
気象庁が発表する1カ月予報(毎週木曜日発表)では週単位の変動を知ることができます。
また、日本気象協会では「平年より高い」といった定性的な情報だけでなく、「前年プラス何℃」といった具体的な数値を予測することで、定量的な需要予測を実現しています。日単位でしたら、2週間先まで予測を行っており、具体的な暑くなるタイミングや寒くなるタイミングを知ることができます。
生産調整、人員配置、価格調整、販促タイミングといったオペレーションに合わせて、こういった気象情報を上手く活用することが、気温の変動が予想される今年の夏を乗り切る鍵といえるでしょう。
4. 日本気象協会の「eco×ロジ」プロジェクトについて
近年、飛躍的に精度が向上している天気予報は、この15年で30%も精度が向上しているといわれています。
日本気象協会では独自の気象予報も開発しており、無償で公開している気象情報よりも高度化した、最大6カ月先までの予測情報を提供しています。
日本気象協会の「eco×ロジ」プロジェクトでは、これらの高度化した気象のデータと商品の販売データなどを解析することにより、未来の商品需要量を高精度で予測する「商品需要予測」を行っています。
あらかじめ必要な商品の量がわかれば、つくりすぎによる食品ロスや製品の廃棄量を減らすことができます。
また年間計画立案時やマーケティング部門でのシーズン商品の立ち上がり・終売の予測に気象情報を活用することで、販売・広告戦略に活用いただけます。
日本気象協会ではSDGsで掲げられている「目標12:つくる責任 つかう責任」の達成に向けて、活動を続けて参ります。
PDFダウンロード:【日本気象協会レポート】2019年夏は反動減に注意_
一般財団法人 日本気象協会
防災ソリューション事業部 シニアデータアナリスト
気象予報士・データ解析士・健康気象アドバイザー・防災士
小越 久美
筑波大学第一学群自然学類地球科学(気候学・気象学)専攻修了。
2004年から2013年まで、日本テレビ「日テレNEWS24」にて気象キャスターを務める。
現在は日本気象協会の商品需要予測事業にて、食品、日用品、アパレル業界などのマーケティング向け解析や商品の需要予測を行い、さまざまな企業の課題を解決するコンサルティングを行っている。
著書に「かき氷前線予報します~お天気お姉さんのマーケティング~」「天気が悪いとカラダもココロも絶不調 低気圧女子の処方せん」がある。

