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日本気象協会、AIにより 降雨予測の「時空間方向」へのダウンスケーリング手法を開発 ~今後、ダムの効率的な運用や洪水予測の精度向上への活用を検討~
Press Release

一般財団法人 日本気象協会(本社:東京都豊島区、理事長:長田 太、以下「日本気象協会」)は、AIを活用し、GSM(注1)ガイダンスを従来の「20kmメッシュ・3時間雨量」から「5kmメッシュ・1時間雨量」へと時間・空間双方でダウンスケーリングする手法(以下、「本手法」)を開発しました。日本気象協会は本手法を2019年6月12日(水)、13日(木)に東京大学農学部弥生講堂にて開催された「2019年度河川技術に関するシンポジウム」にて発表しました(注2)。これまでAIによる「空間」方向へのダウンスケーリング手法は存在しましたが、「時間・空間」の双方向へのダウンスケーリング手法は存在せず、日本気象協会が気象の業界としてはじめて開発しました。

得られる3つのメリット

これまで、時間的・空間的に詳細な降雨予測を行うためには、スーパーコンピュータなど高速処理が可能で高価な計算機が必要でした。日本気象協会が開発した本手法では、スーパーコンピュータを使わず、汎用的な計算機のみで時間的・空間的に詳細な予測を出すことが可能となります。6月12日、13日(木)のシンポジウムでは「5kmメッシュ・1時間雨量」のダウンスケーリング手法を紹介しましたが、今後はさらに「1kmメッシュ・10分雨量」といった時空間方向へのダウンスケーリングも可能となります。

なお、入力する気象モデルはGSMガイダンス以外にも、2019年6月末から気象庁が運用を開始したメソアンサンブル予報(注3)や、ECMWFアンサンブル予測(注4)も利用可能です。アンサンブル予測(複数の予測)に対してのダウンスケーリングは大量の計算処理を要するためスーパーコンピュータを使っても困難ですが、本手法では深層学習(Deep Learning)を利用し、一般的な計算機を使ったダウンスケーリングを行うため、膨大な計算機資源を使用しなくても複数の予測へ対応した運用が可能となります。

■ダウンスケーリングとは

ダウンスケーリングとは、データの時間・空間分解能の詳細化のことです。ダウンスケーリングの手法には力学的ダウンスケーリングと統計的ダウンスケーリングの2種類があります。

全球気候モデルよりも解像度の高い領域モデルを用いて、ある領域に限ってデータの詳細化を行うことを力学的ダウンスケールといいます。最も典型的な例は数値天気予報であり、気象庁では全球モデルの結果を境界値として日本付近を詳細に予測する領域モデル(メソモデル)を運用しています。

一方、統計的ダウンスケーリングでは、広域の気象場とローカルな気象要素との経験的あるいは統計的関係を仮定し、その関係式に基づいて解像度の低いデータから解像度の高いデータへの変換を行います。本手法は統計的ダウンスケーリングに分類されます。

■手法

時空間方向ダウンスケーリングのモデルとして、深層学習のひとつである「畳み込みニューラルネットワーク」(Convolutional Neural Network)を採用しています。なお、一般的な画像認識に用いられている畳み込みニューラルネットワークは2次元のカーネル(注5)が用いられていますが、空間に加えて時間方向にもダウンスケーリングするため、3次元のカーネルを用いているのが特徴です。

■手法開発にいたる経緯

GSMガイダンスはGSMを統計補正したもので、もとのGSMよりも精度が向上していることが知られていましたが、3時間毎の値しか提供されておらず、空間解像度も20kmと、メソモデルの空間解像度5kmに比べて粗いものでした。これら時空間の解像度を5kmメッシュ・1時間にダウンスケーリングすることで、メソモデルと同じ時空間分解能となり、今よりも多くの場面で使うことが出来る予測になると考えました。

■今後の予定

風の数値予測など、他の気象要素にも適用していく予定です。

■日本気象協会からのコメント

AI(深層学習)により、降雨予測を時空間(特に時間)方向へダウンスケーリングすることが可能となりました。これにより、雨域の移動や降水量の増減を滑らかに表現することが可能となります。今後、本手法をダムの効率的な運用や洪水予測の精度向上に応用することで、治水・防災・減災への取り組みに役立てることができるようになります。

注1:全球数値予報モデル:Global Spectral Model
注2:山本・増田,深層学習による降雨予測の時空間方向へのダウンスケーリング手法の開発,河川技術論文集,第25巻P.97,2019年
注3:21メンバーのアンサンブル予測により、メソモデル (MSM) の信頼度や. 不確実性を把握できる
注4:ヨーロッパ中期予報センターが提供している数値予測モデル
注5:フィルターとも呼ばれ、畳み込み演算の際に用いられる格子状の数値データ

以上

PDFダウンロード:【日本気象協会発表】AIにより降雨予測の「時空間方向」へのダウンスケーリング手法を開発_

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