日本気象協会、高潮の予報業務許可を国内ではじめて取得 ~港湾管理者や臨海部の企業へ独自の高潮予報を提供~
Press Release
【お詫び】報道発表時の一部数字情報に誤りがあり、数字の訂正を行い再発行いたしました。
一般財団法人 日本気象協会(本社:東京都豊島区、理事長:長田 太、以下「日本気象協会」)は、気象庁から2021年1月18日(月)、高潮に関する予報業務の許可を取得しましたのでお知らせします。高潮に関する予報業務の許可を得た気象事業者は、日本気象協会が国内初となります。
●日本気象協会が取得した高潮予報業務について
- 目的 : 特定向け予報(港湾・海岸・道路管理者、臨海企業、自治体防災、保険会社などへ高潮予測の提供)
- 予報の種類 : 高潮
- 対象とする区域 : 東京湾、伊勢湾、大阪湾、瀬戸内海での120時間先以内
●日本気象協会が提供する高潮予報について
日本気象協会では最大120時間先の高潮予報を「ポイント予測」「平面分布図」として港湾・海岸・道路管理者、臨海企業、自治体防災、保険会社などの契約者に提供します。高潮予報は、気象庁が提供する5日先(120時間先)までの台風予報を基に5コースの台風経路を設定し、独自の高潮シミュレーションで予測情報を作成します。ポイント予測は最大120時間先までの予測を、平面分布図は最大39時間先までの東京湾、伊勢湾、大阪湾、瀬戸内海の予測地点の潮位を、台風進路ごとに1時間ごとの値を提供します。
高潮の影響が最大5日前から把握可能となることで、各企業のBCP対策や自治体による早めの住民避難計画立案ができるようになるなど、契約者はより早い段階での対策が可能となります。日本気象協会の高潮予報は、これまでよりも余裕を持った避難行動や浸水対策に貢献できます。
●高潮予報提供画面イメージ
【潮位情報(平面分布図表示)】
予報対象区域の潮位の平面分布図を、1時間ごと、39時間先まで表示します。台風接近時には、台風の進路予想5コース(台風予報円の中心、最も早い/遅い進路、予報円の右側/左側の進路)ごとの平面分布図を表示します。
【潮位情報(時系列グラフ表示)】
予報対象区域の任意の沿岸地点の潮位の時系列グラフを、1時間ごと、120時間先まで表示します。潮位の上昇・低下のタイミング、高潮のピーク時間を視覚的に把握できます。
【潮位情報(潮位一覧表表示)】
予報対象区域の任意の沿岸地点の潮位変化について、1時間ごと、120時間先までの値を表形式で表示します。潮位の上昇・低下のタイミング、高潮のピーク時間を定量的に把握できます。
○高潮について
高潮は、台風などによって海面水位(潮位)が上昇する現象です。高潮が発生し一度浸水が生じると、低地における浸水被害が急速に広まることになります。
1959年(昭和34年)の伊勢湾台風では、伊勢湾周辺地域、とりわけ湾奥部の名古屋市を中心とする臨海低平地を中心に死者・行方不明者5,098人、全壊または半壊した住家が15万戸以上と甚大な被害が発生しました。三大湾といわれる東京湾、伊勢湾、大阪湾はたくさんの工場やエネルギー基地が集積している我が国の経済・産業の重要拠点です。これらの後背地には海抜ゼロメートル地帯が577km2あります。いったん高潮浸水が始まると、浸水の長期化、避難の困難性の増大など広範囲に甚大な被害をもたらします。
最近では2018年(平成30年)の台風第21号にて高潮が発生し、大阪市で標高329cm、神戸市で標高233cmなど、過去の最高潮位を越える値を観測しました。近年の大型化する台風や、急速に発達する低気圧などの影響により、湾奥部や海岸付近の低地などで発生する高潮による被害の拡大が懸念されています。
高潮は台風や低気圧に起因するため、これらの予想進路やコースから高潮を予報することが可能です。事前に高潮の影響を推定することで、より早い段階での対策が可能となります。
○高潮の主な発生原因
<吸い上げ効果(左図)>
台風や発達した低気圧が接近すると、短時間のうちに急激に潮位が上昇します。これを“吸い上げ効果”といいます。ストローで息を吸うと水を吸い上げられるように、気圧が下がると海面が吸い上げられて潮位が上昇します。目安として、気圧が1ヘクトパスカル(hPa)低下すると、海面が1cm上昇するといわれています。
<吹き寄せ効果(右図)>
台風などで、強い風が海側から陸側へと吹いたとき、海水が風によって海岸の方へと吹き寄せられ、海岸付近の潮位が上昇します。これを“吹き寄せ効果”といいます。吹き寄せ効果は、風が強いほど大きくなり、風速が2倍になると吹き寄せ効果は4倍にもなります。さらに、湾の地形によっては、奥に行くほど幅が狭くなり、その結果さらに海水面の上昇がみられる場合もあるため、このような地形では特に注意が必要です。
○高潮予報へのお問い合わせ(法人向け)
日本気象協会 社会・防災事業部 営業課
Tel:03-5958-8143 Mail:eigyou_bosai@jwa.or.jp
*報道関係の方は日本気象協会 広報室までお問い合わせください。
以上
PDFダウンロード:【訂正:再発行】 独自の高潮予報提供を開始_