日本気象協会、神戸大学・レラテックとともに NEDO「洋上風況観測にかかる試験サイトのモデル検討・構築」に採択 青森県むつ小川原サイトから、洋上風力発電の普及を加速
Press Release
一般財団法人 日本気象協会(本社:東京都豊島区、理事長:長田 太、以下「日本気象協会」)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、「NEDO」)が公募した「洋上風況観測にかかる試験サイトのモデル検討・構築」に国立大学法人 神戸大学(本学:兵庫県神戸市、学長:藤澤 正人)およびレラテック株式会社(本社:兵庫県神戸市、代表取締役:小長谷 瑞木)とともに応募し、2022年11月7日(月)に採択されましたのでお知らせします。
本事業では、3者の技術力を生かして、国内初となる洋上風力発電に係る風況観測の精度担保に必要な校正試験サイトのモデルを、青森県六ヶ所村むつ小川原港内(以下、「むつ小川原サイト」)に構築・整備していく予定です。
日本気象協会はこの事業を通じて、洋上風力発電の開発に必要な風況観測に使用する機器の校正試験および試験サイトに求められる基本的な仕様などの検討を行うことで、今後、大量導入が期待される洋上風力発電の普及促進に貢献していきます。
【事業内容】
洋上風力発電に係る洋上風況観測の精度担保に必要な校正試験サイトのモデル検討・構築のため、以下の研究開発を実施。
a. 試験サイトに対する業界のニーズ調査
b. 試験サイトの運用スキームの検討
c. 業界のニーズを反映した試験サイトの整備及び効果測定
d. 試験サイトに求められる基本的な仕様のとりまとめ

【事業背景】
洋上風力における課題
洋上風力発電では、事業性評価やウインドファームの実施設計にあたり高精度な風況データを取得することが不可欠です。しかし、このために洋上に風況観測マストを設置することは、一般的に地元との調整、許認可手続きや多大なコストを要します。近年はこれに代わる観測手法として、国内外でスキャニングライダー*2やフローティングライダー*3を始めとした、ドップラーライダー*1による風況観測が取り入れられています。
ドップラーライダーの観測精度を担保するためには、観測に使用する機器精度の検証試験が必要です。しかし、国内において一般に開放されている試験サイトが存在せず、その施設の整備や運用が求められています。
洋上風力への期待の高まり
■2018年7月3日 「第5次エネルギー基本計画」閣議決定
風力を将来的に大型電源として活用するための計画。洋上風力については、地域との共生を図る海域利用のルール整備や系統制約、基地港湾への対応、関連手続きの迅速化と価格入札も組み合わせた洋上風力発電の導入支援策を講じていくことが決定。
■2019年4月1日 「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法)」施行
洋上風力発電が、①海域の占用に関する統一的なルールがない、②先行利用者との調整の枠組みが存在しない、という課題により導入が進んでいなかったことを受け、これらの課題の解決に向け成立。
■2021年10月22日「第6次エネルギー基本計画」閣議決定
洋上風力発電を「再生可能エネルギー主力電源化の切り札」として推進していくことが決定。
上記の課題認識と期待の高まりを受け、本事業での研究開発を推進していきます。
【事業期間】
2022年11月上旬~2024年3月
事業採択に関する詳細:https://www.nedo.go.jp/koubo/FF3_100351.html

*1:ドップラーライダー(Doppler Lidar):ドップラー効果による周波数の変移を観測することで、観測対象の相対的な移動速度と変位を観測する事のできるLIDARの一種。LIDARとは、Light Detection and Ranging(光検出と測距)、Laser Imaging Detection and Ranging(レーザー画像検出と測距)の略であり、光を用いたリモートセンシング技術の一つ。ライダーはリモートセンジングで風況観測をおこなうため、風速計などと比較した校正が必須である。
*2:スキャニングライダー:レーザービームを照射し、大気中の浮遊粒子による後方散乱を受信することで、風況を観測できる装置。 沿岸に設置し、洋上に向かってレーザーを発することで洋上の風況を測定できる。スキャニングライダーは首を振りながらレーザーを照射して、レーザーが通った部分の風況を測定する。
*3:フローティングライダー:洋上の浮体構造物に上空の風をレーザーにより測定するドップラーライダーを設置し、洋上の風況観測を行う装置。(スキャニングライダーやフローティングライダーを利用することにより、気象マストで観測する事が困難であった、洋上の高高度や水深の深い海域での風況観測が比較的容易に可能となります)
以上