日本気象協会、KPMGコンサルティング・あずさ監査法人と共同でT&Dホールディングスの気候変動リスク分析の高度化を支援
Press Release
一般財団法人 日本気象協会(本社:東京都豊島区、理事長:長田 太、以下「日本気象協会」)はKPMGコンサルティング株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 兼 CEO :宮原 正弘、以下「KPMGコンサルティング」)と2020年8月から、温室効果ガスの排出抑制と、気候変動によるリスクの軽減の実現に向けた高度予測分析に基づく総合コンサルティングサービスの提供について協業を開始し、気候変動に関わるリスク分析や、気象・気候データ利活用を共同で推進してきました※。
このたび、日本気象協会およびKPMGコンサルティングは、金融機関に対する気候変動リスク分析支援の豊富な経験を有する有限責任 あずさ監査法人(本部:東京都新宿区、理事長:森 俊哉、以下、「あずさ監査法人」)と連携し、株式会社T&Dホールディングス(本社:東京都中央区、代表取締役社長:上原 弘久、以下「T&Dホールディングス」)の気候変動リスク分析の高度化を支援します。
生命保険業界では、自社が機関投資家として多大な資産運用を行っていることから、低炭素社会への移行に伴って発生する政策・法務・技術・市場の変化等に起因した損失リスクである「移行リスク」の管理が重要です。また生命保険事業への影響評価の観点から、異常気象の激甚化、平均気温の上昇等、気候変動によって起こる人の生命や健康、建物等への直接的な被害に関するリスクである「物理的リスク」の分析も重要な取り組みに位置づけられています。
このような状況を受け、KPMGコンサルティングは本支援における全体プランニングを実施し、またあずさ監査法人は、T&Dホールディングスの気候変動の移行リスク分析高度化の支援に向け、気候変動による投融資ポートフォリオへの影響評価を行い、投融資ポートフォリオにおける将来の炭素コスト増加による財務インパクトへの推計モデルを構築しました。また日本気象協会は、物理的リスク分析高度化の支援に向け、高精度な気候変動予測データに基づく「高解像度地域気候シナリオデータセット」を開発しました。
T&Dホールディングスはあずさ監査法人が構築した上記推計モデルを活用し、投融資ポートフォリオにおける移行リスクの定量分析を実施するとともに、日本気象協会が開発したデータセットを活用し、生命保険事業における物理的リスクのうち2100年までの「水害による災害犠牲者数」・「熱中症搬送数・死亡者数」の将来予測を実現しました。
【移行リスク分析高度化のポイント】

あずさ監査法人は、移行リスク分析のために企業の将来の財務影響を評価する、フォワード・ルッキングなシナリオ分析手法を開発しました。T&Dホールディングス向けには、全業種を対象に炭素コスト増加にフォーカスしたポートフォリオ・アプローチにより、将来の炭素コスト増加による財務インパクトを推計するモデルを構築しました。
上記モデルを活用し、気候変動により将来の平均気温が2℃上昇、4℃上昇のシナリオそれぞれにて、個社ベースの将来の炭素コスト増加を推計するボトムアップ・アプローチを使用して、将来の株価・債券価格影響を推計し、財務インパクト評価を行うことで移行リスク分析を実施しました。
【物理的リスク分析高度化のポイント】
日本気象協会は、物理的リスク分析のために気候変動予測データを1kmメッシュに高解像度化した「高解像度地域気候シナリオデータセット」を開発しました。T&Dホールディングス向けには、このデータセットを活用し、気候変動により将来の日本国内の平均気温が2℃上昇、4℃上昇のケースで「水害による災害犠牲者推計」および「熱中症搬送者数・死亡者推計」のモデルをそれぞれ開発し、2100年までのそれぞれの物理的リスク分析を実施しました。
水害による災害犠牲者推計においては、過去に観測された雨量の最大値との比(既往最大比)などを用いて災害犠牲者推計評価関数を作成し、これに将来期間(2026~2100年)の気候予測データセットと人口分布データを投入することで推計を実施しました。その結果、日本では気候変動により必ずしも右肩上がりで災害犠牲者が上がるわけではないものの、強大な台風など極端な豪雨の発生により多大な災害犠牲者が発生する年が生じる可能性が示唆されました。

熱中症搬送者数・死亡者推計では、過去の気温実績データと都道府県別および世代別の熱中症搬送者数データより熱中症搬送者数推計評価関数を作成し、これに将来期間の気候予測データセットと人口分布データを投入することで推計を実施しました。その結果、特に4℃上昇するシナリオの将来期間の後半で、現在と比べ熱中症搬送者数が急増する可能性が示唆されました。

【今後の展開】
近年、気候変動による激甚災害や経済的な損失が発生し、今後も温暖化の進行により一層深刻な被害が懸念されています。企業における気候変動対策は情報開示や脱炭素等の取り組みだけではなく、気候変動や異常気象により生じるリスクへの実効的な対策が求められています。
日本気象協会とKPMGコンサルティングは、このたびのあずさ監査法人との連携をはじめ、企業のテーマに合わせた支援体制を柔軟に構築することで総合的な気候変動対策の支援を提供していきます。このたびの協業を通じて、企業の気候変動リスク対応の強化や新たな機会創出検討等の取り組みを支援します。また、T&Dホールディングスでは、本分析結果に基づき、事業影響評価や情報開示を進め、具体的かつ実効的な対策を推進していく予定です。
※日本気象協会報道発表(2020年8月5日)
KPMGコンサルティングと日本気象協会、気候変動の緩和・適応に向けた総合コンサルサービス
の提供で協業
-高度予測分析により企業のビジネスプランやリスク管理態勢の高度化を支援-
https://www.jwa.or.jp/news/2020/08/10690/
PDFダウンロード:【日本気象協会報道発表】日本気象協会、KPMGコンサルティング・あずさ監査法人と共同でT&Dホールディングスの気候変動リスク分析の高度化を支援_