日本気象協会、最大15週先の「野菜の相場予測」の提供を開始 ~気象データを活用し、食品ロス削減・流通安定化・経済効果の創出へ~
Press Release
一般財団法人 日本気象協会(本社:東京都豊島区、理事長:渡邊 一洋、以下「日本気象協会」)は、全国の主要市場における野菜の取引価格および取引数量を予測する「野菜の相場予測」を2025年12月3日(水)から提供開始します。
本サービスは、日本気象協会が保有する気象データと、農作物の取引に関する各種データを活用し、野菜産地の気象条件が生育や流通量に与える影響を体系的に分析し、最大15週先までの市場動向を予測するものです。これにより、流通や小売、食品加工・外食産業における仕入れや販売計画の高度化を支援し、需給の安定化と食品ロス削減に寄与します。
野菜の相場は、気温・降水量・日射量などの気象条件に大きく左右され、これらの要因は不作や豊作を通じて流通量や価格に影響を与えます。近年は気候変動の影響により、気象の変動幅が大きくなる傾向が指摘されており、市場の不確実性が高まりつつあります。
例えば、2024年の秋から冬にかけて異常高温と極端な少雨が重なり、生育状況の変化が従来のパターンから外れ、経験則や過去傾向に基づいた相場見通しが難しくなる場面がありました。
こうした気候変動による市場の不確実性が高まる中で、気象情報を踏まえた需給予測の重要性が高まっています。日本気象協会は、これまでさまざまな分野で培ってきた気象と需要に係るデータ分析の知見を活用し、農業・流通分野に特化した「野菜の相場予測」サービスの提供を開始します。
◆対象となる野菜は約50品目、全国14市場をカバー
対象となる野菜は、キャベツ、レタス、はくさい、だいこん、にんじん、たまねぎの主要6品目に加え、トマト、ピーマン、ほうれん草、ばれいしょなど、約50品目を対象としています。全国にある14の主要市場※を対象に、取引価格および数量予測を最大15週先まで週次で提供します。
※ 札幌市、仙台市、東京都、横浜市、名古屋市、金沢市、大阪市、京都市、神戸市、広島市、高松市、福岡市、北九州市、沖縄県の14市場
◆産地の気象状況を考慮した予測モデル
「野菜の相場予測」で開発した予測モデルでは、品目ごとに産地の気象データ(気温・降水量・日射量など)を基に生育状況を概念的に推定し、流通量の変動要因として組み込みます。また、気温が需要に与える影響も考慮し、供給と需要の双方を踏まえた総合的な予測を実施します。
◆予測精度:70%程度の精度で予測が可能、異常気象にも対応できる
2013年から2025年までの実績データを用いた検証の結果、価格変動(上昇・下降)の適中率は、品目カテゴリ別に平均63~73%の範囲で予測できることが明らかとなりました。具体的には、葉菜類69%、茎菜類71%、きのこ類73%、果菜類71%、根菜類69%となります。図1では、品目ごとの価格変動の適中率を、モデル構築期間(折れ線グラフ)とモデル検証期間(棒グラフ)に分けて示しています。

これまで、キャベツなどの葉物野菜は、高温時にも生育が順調で価格も安定すると見られてきました。しかし、異常な高温時には生育が抑制され、収量や品質が安定せず、結果として価格が高騰するケースがあります。「野菜の相場予測」で開発した予測モデルでは、こうした異常な気象による影響も加味できるようになりました。(図2)

(注)【図1】【図2】ともに解析値の算出にあたり、気象データは観測値を使用しています。
◆活用例 産地から流通、小売、生活者にも有益な情報
「野菜の相場予測」は、特定の業態に限らず、産地・卸・流通加工・製造・小売、そして生活者まで、サプライチェーン全体で活用できるサービスです。気候変動により異常気象が増加すると見込まれる中、価格変動リスクを事前に把握することは、サプライチェーン全体の安定確保において重要です。「野菜の相場予測」は、こうした不確実性に対して科学的な根拠を持つ判断材料を提供し、計画精度の向上やリスク低減に貢献します。
| 利用者 | 主な活用内容 | 期待効果 |
| 小売 | 仕入れ量の調整、販促時期の最適化、 価格設定の判断 | 過剰在庫抑制、販売計画の精緻化、 利益率改善 |
| 加工・外食 | カット野菜の配合計画、 原料調達の平準化 | 調達コストの平準化、 欠品リスクの低減 |
| 商社・卸売 | 輸入・国内調達の判断、 仕入れ契約のリスク管理 | 調達リスクの低減、 需給に応じた柔軟な意思決定 |
| 産地・生産者団体 | 出荷タイミングの調整、 生産計画への反映 | 価格の安定化、 収入見通しの改善 |
| 生活者 | お買得商品の計画的な購入 コストを抑えたレシピの立案 | 家計管理の最適化 売り切れストレスの軽減 |
◆選べるデータ提供方法 スマホアプリで気軽に閲覧
「野菜の相場予測」は、用途に応じて、「PDFまたはCSVでのデータ提供(メール配信)」と「ビジネス向け天気予報アプリbiz tenkiでの閲覧」で提供します。自社データと組み合わせて分析を行いたい場合はCSV形式をご利用ください。スマホアプリbiz tenkiは手軽に閲覧でき、試しに予測を見てみたい場合に便利です。用途に応じて利用方法を選択してください。
なお、個人の方も、ビジネス向け天気予報アプリ「biz tenki」をダウンロードすることで、「野菜の相場予測」を利用いただけます。
◆「野菜の相場予測情報」概要
提供方法
①PDFまたはCSV形式
②ビジネス向け天気予報アプリ「biz tenki」
| (1)PDFまたはCSV形式 | (2)アプリ「biz tenki」 | |
| 掲載品目数 | 野菜全50品目 | 指定野菜15品目 |
| 掲載単位 | 金額、数量 | 指数、平年比 |
| 予測リードタイム | 15週先まで | 8週先まで |
| 提供方法 | PDFまたはCSV形式(メール配信) | スマートフォンアプリでの閲覧 |
| 料金 | お問合せください | 月額650円(初月無料) |
PDFまたはCSV形式での提供をご利用の場合は、「野菜の相場予測」をお客さまの事業に効果的に活用するための気象コンサルティングも併せて実施可能です。詳細については、ぜひお問合せください。
◆今後の展望
日本気象協会は、気象データを活用した社会課題の解決を続けています。農業・流通分野における気象情報の利活用をさらに推進し、より高度なサービスの提供を目指します。今後は、果実類や加工食品領域への対象拡大に加え、AI技術による需給シミュレーションの高度化など、実用性を高めたサービスへと発展させていく予定です。
◆本サービスに関する問い合わせ先
https://weather-jwa.jp/contact/
*報道関係の方は日本気象協会 広報室までお問い合わせください
◆参考情報
・気象データを活用した「野菜の相場予測」で企業経営を支援
(日本気象協会 公式note「Harmonability style」)
https://note.jwa.or.jp/n/naf3c55887fba
・商品需要予測コンサルティング
https://www.jwa.or.jp/service/weather-and-data/weather-and-data-01/
・ウェザーマーケティング情報メディア「Weather X」
https://weather-jwa.jp/
PDFダウンロード:【日本気象協会報道発表】最大15週先の「野菜の相場予測」の提供を開始_