日本気象協会、微気圧振動(インフラサウンド)観測データを無償公開 ~微気圧振動研究者の方への有益な情報提供を通じ、社会防災力の向上に貢献~
Press Release
一般財団法人 日本気象協会(本社:東京都豊島区、理事長:長田 太、以下「日本気象協会」)は、2013年から観測を行ってきた大気中の微小な気圧振動(インフラサウンド、以下「微気圧振動」)(注1)の観測データを、3月30日(火)から公開しますのでお知らせします。
【無償公開する微気圧振動の観測データについて】
〇データ名称:微気圧振動観測データ
〇観測地点:
岩手県(大船渡中学校、末崎中学校、綾里中学校)
三重県(南伊勢高校南勢校舎、志摩高校、水産高校)
統計数理研究所/東大地震研(潮岬、菅平)
〇画面イメージ


〇データ利用料金:無料
〇観測データの期間:過去2年間
〇観測データの閲覧方法:
データ閲覧ページ http://micos-sc.jwa.or.jp/infrasound-net/ にてグラフ形式にて閲覧可能
※現在時刻から過去2年までのデータ(最大30分幅)を閲覧可能です
〇観測データのダウンロード方法:
・データ閲覧ページ http://micos-sc.jwa.or.jp/infrasound-net/ にてユーザ登録をいただく
・登録アドレス宛に送付される利用ID/パスワードを用いて、会員向けサイトからログインしてファイルをダウンロード
〇観測データ出典元の機関名:
一般財団法人 日本気象協会
大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所
東京大学地震研究所
〇データファイル形式:WINフォーマット形式(注2)、CSV形式
〇データの利用に際して:微気圧振動データを利用して資料を作成される場合は、全てのデータ出典元機関名を成果物に記載いただき、成果物を日本気象協会まで送付ください。
〇日本気象協会の微気圧振動(インフラサウンド)に関する取り組み紹介ページ: https://www.jwa.or.jp/service/overseas-expansion/overseas-expansion-03/
【微気圧振動の研究背景】
日本気象協会は、公益財団法人日本国際問題研究所からの委託を受け、2002年から包括的核実験禁止条約(CTBT: Comprehensive nuclear-Test-Ban Treaty)に関わる業務を行っています。
CTBTでは、地下・大気・水中の核実験を監視するために、地震・微気圧振動・水中音波・放射性核種の観測所を全世界に展開しています。また多くの国ではCTBTの観測データをもとに核実験を監視するためのNDC(National Data Centre)という組織を整備しており、日本では日本気象協会がこのNDCの機能を一部担っており、NDCの機能整備や日本国内の地震と微気圧振動の観測所(地震6カ所、微気圧振動1カ所)の維持管理、データ解析などを担当しています。
地震などを原因とする津波 (海面の隆起・沈降がすばやく広い範囲で生じる現象) が発生したとき、海面に接した大気は圧縮・伸張され、気圧の振動を生み出します。その際に発生する微気圧振動は、その伝達速度が音速とほぼ同じ速度であるため、津波が到達するより早く計測されます。沿岸部に微気圧振動を観測するセンサー(微気圧計)を設置すれば、津波が到達するより前に津波の発生を示唆する兆候や津波の規模を検知することができると期待されています。
2011年3月11日に発生した「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」では、津波から発生した微気圧振動がCTBTの観測網にて観測されました。このことをきっかけに、日本気象協会では微気圧振動を観測することで津波を事前に検知するための研究を開始しました。
津波の観測に使われている観測機器の多くは、海上や海底に設置されるもので、観測場所の津波を直接測れるという利点がある一方で、日本気象協会が行っている微気圧振動観測は、津波が発生した海域から離れた場所(陸上)で行うため、津波によって破壊される危険性を回避できると期待されます。また、海上や海底の観測手法に比べて安価で設置が容易であり、海上や海底に津波の観測機器が展開されていない領域を補完するような観測手段となり得ます。

【本研究について】
「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」の際、津波が発生した海域で海面の隆起・沈降によって発生したとみられる微気圧振動が、津波の到達前に陸上の精密な気圧計で捉えられました。これをきっかけとして日本気象協会では津波の早期検知に関する研究を開始し、微気圧振動研究に携わる研究機関と連携しながら、太平洋側の複数の地点で試験的に微気圧振動の観測を実施しています。
その後、2013年7月には、当時地震活動が活発であった岩手県大船渡市内で観測を開始し、2015年6月には、過去に巨大地震・津波が発生した記録のある南海トラフを臨む三重県志摩地域での観測を開始しました。
このたび微気圧振動研究の促進を目的として、日本気象協会の微気圧振動観測データを公開させていただくこととなりました。また、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所(東京都立川市)並びに東京大学地震研究所(東京都文京区)のご協力により、両研究機関で観測されている微気圧振動観測データも、あわせて公開いたします。
公開サイトでは、微気圧振動観測データの時系列変化をグラフで閲覧することができ、ユーザ登録された方は観測データをダウンロードすることも可能です。これらの観測データをご活用いただくことで微気圧振動研究推進の一助になれば幸いです。また、今後ご協力いただける機関があれば、さらに公開データを拡充していきたいと考えております。
日本気象協会では、微気圧振動観測データが津波に対する防災や減災の取り組み以外の目的でも活用できるよう、竜巻などの極端気象、土砂災害や雪崩などの自然災害発生監視への応用に向けても、今後も継続して積極的な研究に取り組んでまいります。
日本気象協会 社会・防災事業部 防災マネジメント課
課長 乙津 孝之
○微気圧振動へのお問い合わせ(法人向け)
日本気象協会 社会・防災事業部 営業課
Tel:03-5958-8143 Mail:eigyou_bosai@jwa.or.jp
*報道関係の方は日本気象協会 広報室までお問い合わせください。
注1:0.1ヘクトパスカルに満たない微小な気圧の変動のこと 0.1ヘクトパスカルは9.86923267 × 10^-5 気圧
注2:東京大学地震研究所で開発した多チャネル地震波形データ処理システム「WIN システム」にて使用されるデータ形式
以上
PDFダウンロード:【日本気象協会報道発表】 微気圧振動(インフラサウンド)観測データを無償公開_