社会・防災事業部 小越 久美が令和7年度 文部科学大臣表彰(科学技術振興部門)を受賞
「季節予報の基盤技術の開発に基づく社会実装の振興」
Press Release
一般財団法人 日本気象協会(本社:東京都豊島区、理事長:渡邊 一洋、以下「日本気象協会」)社会・防災事業部の小越 久美が、文部科学省による「令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(科学技術振興部門)」を筑波大学 生命環境系 植田宏昭教授と共に受賞しました。

文部科学省では毎年、科学技術に関する研究開発、理解増進などにおいて顕著な成果を収めた者を「科学技術分野の文部科学大臣表彰」として顕彰しています。なお文部科学大臣表彰「科学技術賞」(科学技術振興部門)は、「科学技術の振興に寄与する活動を行った者」を受賞の対象としています。
極端な気象による社会・経済への影響が深刻化する昨今、物理学的手法によって未来を予測することができる「気象データ」の重要性が高まりつつあります。特に企業活動では資材発注や経営計画の最適化のため、1年以上先の長期の気象を予測する季節予報の需要が高まっています。一方、これまでの予測技術で担保できる季節予報の精度には限界があったことと、国の予報業務許可制度で認められていた予報の期間は6カ月先までだったため、そのニーズに応えることが難しい状況にありました。
日本気象協会と筑波大学は、日本域の月別の平均気温、降水量、日照時間について1年先を超えて精度高く予測する機械学習モデルの開発に2019年度から取り組みました。本技術では、従来の予測手法と比べて誤差が20~40%改善し、1年先を超えて有意な相関を持つ予測が可能となりました。
2023年に国の予報業務許可制度が改正され、予報期間を延長した情報の提供について気象庁から認可を受けたことで、日本気象協会は本技術を活用した「2年先長期気象予測」の提供を開始しました。気象業界で初となる「2年先長期気象予測」は、企業の生産計画や販売計画、経営計画などで役立てられています。物流の最適化や過剰在庫の削減、エネルギー需給の最適化等を支援することで、効率的で持続可能な社会の実現に寄与しています。
参考情報
日本域における精度の高い統計的季節予報手法を開発
日本気象協会 報道発表 2024年6月11日
URL https://www.jwa.or.jp/news/2024/06/23104/
気象業界初!日本気象協会「2年先長期気象予測」の提供を開始
~気象がビジネスに大きく影響するなか、より長期間の高精度な気象予測で支援~
日本気象協会 報道発表 2024年6月11日
URL https://www.jwa.or.jp/news/2024/06/23127/
受賞の詳細
■受賞名称:令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰「科学技術賞(科学技術振興部門)」
■受賞業績:季節予報の基盤技術の開発に基づく社会実装の振興
■受賞者 :小越 久美(一般財団法人 日本気象協会 社会・防災事業部 気象デジタルサービス課 副課長)
植田 宏昭(国立大学法人 筑波大学 生命環境系 教授)
■表彰式 :2025(令和7)年4月15日 文部科学省講堂にて
■主要論文・著書:Ueda, H., Y. Kamae, M. Hayasaki, A. Kitoh, S. Watanabe, Y. Mikiand A. Kumai: 2015: Combined effects of recent Pacific cooling and Indian Ocean warming on the Asian monsoon. Nature Communications, 6, 8854.
https://doi.org/10.1038/ncomms9854
気候システム論 ―グローバルモンスーンから読み解く気候変動―、248pp 、2012年、植田宏昭(筑波大学生命環境系教授)、筑波大学出版会
https://www.press.tsukuba.ac.jp/image/32_CSS_leafletweb_ze_s.pdf
■特許 :特許7569539情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
■文部科学省からの報道発表(2025年4月8日)
令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者の決定等について
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_01503.html
小越 久美からの受賞コメント
このたび、文部科学大臣表彰を植田先生とご一緒に受賞できましたこと、誠に光栄に存じます。長年にわたり気候分野の研究を牽引されてきた植田先生のご指導とご尽力に、心より深く感謝申し上げます。あわせて、共に挑戦を重ねてきた仲間の皆さま、そして日頃より支えてくださったすべての皆さまにも、心より感謝申し上げます。今後も、季節予報の社会実装に貢献し、より良い未来の創造に努めてまいります。
PDFダウンロード:【日本気象協会報道発表】社会・防災事業部 小越 久美が令和7年度 文部科学大臣表彰(科学技術振興部門)を受賞_