日本気象協会「鳥類観測技術」で台湾の「洋上風力発電の鳥類事後調査業務」に参画 ~日本の鳥類の観測技術が海外のインフラ設備に 初採用~
Press Release
一般財団法人 日本気象協会(本社:東京都豊島区、理事長:長田 太、以下「日本気象協会」)は自社が保有する「鳥類観測技術」が、このたび台湾の「洋上風力発電の鳥類事後調査業務(以下、本業務)」に採用されたことをお知らせします。本業務は風車の稼働による鳥類への影響を把握する調査です。
日本気象協会が開発した風力発電事業を対象とした「鳥類観測技術」は、主に(1)船舶レーダ※1を活用した「鳥類軌跡抽出システム」と(2)赤外線カメラと動体検知プログラムを組み合わせた「バードストライク※2検知システム※3」から構成されます。
このような国内の鳥類の観測技術が海外のインフラ設備に採用されたのは初めてです。なお本件は、内閣官房主催の経協インフラ戦略会議での決定事項「インフラシステム輸出戦略」(令和元年度改訂版)に記された洋上風力発電に関連した日本企業の技術の一つとなると考えます。
※1 船舶レーダはSバンド、Xバンドを活用。本来、船舶レーダはカツオ漁などでの海鳥の発見(Sバンド)、船舶の障害物への衝突防止(Xバンド)のために使用される。Xバンドの波長は短く物体からの反射波をとらえやすい。Sバンドは波長が長く電波の減衰が少なくより遠くの物体をとらえるのに都合がよい、という特徴を持つとされる。日本気象協会の「鳥類観測技術」では風力発電事業の規模や立地条件に応じ、SバンドとXバンドを使い分けて(あるいは組み合わせて)使用。
※2 バードストライク・・・鳥類などが航空機や風力発電施設に衝突する事故のこと
※3 バードストライク検知システム・・・2016年7月発表(https://www.jwa.or.jp/news/2016/07/4615/)
本業務は、ドイツの大手再生可能エネルギー開発事業者wpd社の台湾法人「達徳能源集団(ダーダエネルギー集団)」が台湾雲林(ユンリン)県沖合に開発する洋上風力発電施設(総出力電力640MW)において、日本気象協会が台湾の民間気象会社「WeatherRisk社(以下、WR社)」と共同で実施するものです。
1. 日本気象協会の風力発電事業を対象とした「鳥類観測技術」について
従来の調査に加えて、「鳥類軌跡抽出システム」と「バードストライク検知システム」を組み合わせることで従来の調査の課題を解決した事後調査が可能です。
■ 従来の調査
目視調査
・飛翔する鳥類を目視追跡し、地図上に軌跡をトレースする
死骸踏査
・風車近くを踏査し、衝突死した鳥類の死骸をみつける
<課題>
・目視のため地図へのトレース、飛翔高度の精度などが課題
・目視のため夜間観測が困難
・広範囲かつ長時間の観測には、多数の鳥類調査員の確保が必要
・洋上での死骸踏査は困難
■ 日本気象協会の「鳥類観測技術」
鳥類軌跡抽出システム(船舶レーダのSバンド、Xバンドを活用)
・広範囲を高精度かつ長時間の観測が可能になるとともに、課題であった夜間の観測も可能
・映像から高精度な鳥類の飛翔高度や軌跡を自動で抽出が可能
バードストライク検知システム(赤外線カメラと動体検知プログラムを活用)
・風車近くを24時間365日、自動で飛翔または衝突する鳥類などを高精度で観測することが可能
・死骸踏査が困難な洋上では有効な手法
2. 日本気象協会の海外事業について
日本気象協会の海外事業は、日本の政府開発援助(ODA)での技術協力と日本企業の海外展開支援の2つの事業で構成されます。1983年にはODAの防災分野へ参画し、これまでに世界21の国、地域で国際協力に貢献しています。政府のインフラシステム輸出戦略を契機とした日本企業の海外展開には、保有する気象、防災、環境の技術とデータにより、お客さまの海外展開を支援しています。事業機会の形成に向けた海外政府、民間企業・団体との連携にも取り組んでいます。
日本気象協会は、今後も未来に向けて挑戦し続けるプロフェッショナルとして、国内外問わず社会課題を解決し、持続可能な社会を実現する企業活動を続けてまいります。