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(レポート)2019年の夏は天候不順の可能性 ~気象情報を活用した生産計画を~
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  2018年の夏は各地で40℃前後に達する歴史的な猛暑となり、西日本を中心とした記録的豪雨による物流への影響もあって、ドリンクや熱中症関連商品を中心に夏商品の欠品が相次ぎました。また、アウトドア関連商品や嗜好品の売り上げが落ち込むなど、いつもの夏とは異なる需要の変動がありました。
2019年の夏は天候不順が予想されています。2018年に需要が大きく変動した商品は反動が大きくなる可能性があり、適切な需要予測が不可欠です。2019年の夏の天候の見通しと、流通業を中心とした企業の皆さまへの注意点を解説します。

1.    2019年の夏の予報は?

 

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図1 夏(6~8月)の気温・降水量(データ元:気象庁・2月25日発表)

  図1は、気象庁が2月25日に発表した夏(6〜8月)の予報を元に日本気象協会が作成した図です。
今年の夏の平均気温は、沖縄・奄美で平年並みか高いほかは、ほぼ平年並みと予想されています。
梅雨の降水量は、沖縄・奄美で平年並みか多いほかは、ほぼ平年並みの予想ですが、夏期間を通した降水量は、北海道から九州にかけて平年並みか多いと予想されています。
この予報の根拠となっているのが、現在発生している「エルニーニョ現象」です。エルニーニョ現象が発生している時の日本の夏は、夏の主役である太平洋高気圧の勢力が弱く、不順な天候になることが統計的にも分かっています。今年の夏は、梅雨が長引いたり、梅雨明け後も晴れが続かず雷雨が多くなったりするなど、不順な天候になる可能性があります。

2.    冷夏になる可能性はないの?

「ほぼ平年並み」の気温が予想されている今年の夏ですが、エルニーニョ現象と言えば「冷夏」という言葉を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。今年は、冷夏になる可能性はないのでしょうか。

そもそも平年値とは“過去30年の平均値”で、10年ごとに更新され、現在は1981年から2010年の平均値が用いられています。

図2は東日本の夏(6〜8月)の平均気温の推移で、平年値からの差で表されています。つまり、このグラフの0℃ラインが平年値(1981年から2010年の平均値)で、「平年並み」とは、東日本の場合-0.1℃から+0.3℃の範囲の気温で定義されています。

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図2 東日本の夏(6〜8月)の平均気温の平年差

  「冷夏」とは、夏の平均気温が平年並みの範囲を下回る夏として定義され、東日本の場合でいうと冷夏になったのは21世紀に入ってからは2003年と2009年の2回のみです。地球温暖化の影響で夏の平均気温は年々高くなっており、全国の広範囲で「冷夏」になる可能性は低いと言えるといえるでしょう。

  加えてここ10年の水準から見ると、「平年並み」の水準はかなり低いことが分かります。気象庁では、近年の気温の上昇トレンドを鑑み、今年の夏の平均気温を「ほぼ平年並み」と予想していますが、「ここ10年の中では暑い日が少ない夏になる」可能性が高いと捉えるのが適切でしょう。

3.    今年の夏は昨年からの反動に注意

昨年夏の猛暑により需要が大きく変動した商品は、今年の夏は反動が大きくなる可能性があります。

図3[左]は、昨年の夏に需要が大きく伸びた商品のランキングです。
赤色の棒グラフは、例年、夏に暑いほど売り上げが伸びる商品です。アイスクリームやスポーツドリンク、ミネラルウォーターや液体茶、生麺・ゆで麺といった、例年夏に需要が伸びる商品が、猛暑によって売り上げが伸びました。
一方、本来は涼しいほうが売れる(暑いと売り上げが伸びない)日本酒やチョコレート、冷凍調理品や、菓子パン・調理パンなどがランクインしたのが昨年の特徴でもあります。これは、暑すぎたことにより外出を控え、冷房の効いた室内で過ごす人や、自炊をする人が増えたことなどが影響したのかもしれません。

図3[右]は、昨年の夏に売り上げが落ちた商品です。
赤色の棒グラフで表した例年暑いほど売り上げが伸びるはずの商品が、意外にも多くランクインしていることが分かります。
昨年の夏は猛暑にも関わらず、ビールや殺虫剤、日焼け止めなど、ふだんは暑いほど売れるはずの商品の売り上げが落ち込みました。暑すぎたことによる外出控えのほか、殺虫剤が落ち込んだのは、ハエや蚊の活動温度といわれている20℃〜30℃の温度帯を大きく上回る暑さが続き、そもそもハエや蚊がいなかったことが影響しているでしょう。また、夏は暑すぎると食欲の減衰によって、高カロリーの商品より低カロリーの商品が売れたり、嗜好品よりも生活必需品が売れたりする傾向があります。ビールや果汁飲料、乳酸飲料、紅茶ドリンクに代わって、熱中症対策にスポーツドリンクやミネラルウォーターを飲む人が増えたということも考えられます。

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図3 左:2018年夏(6~8月)に売り上げが伸びた商品 右:2018年夏(6~8月)に売り上げが落ちた商品

※インテージSRIデータより作成 (トレンド要因を除いた)2017年同時期との差・単位は100万円

 

4.    オペレーションに合わせた気象情報の活用を

このように、昨年の夏は、商品の売り上げにこれまでの傾向とは違った変動がありました。ここで挙げた商品はとくに、今年の夏は昨年からの需要の反動が大きくなる可能性があります。今年は、こういった気温による変動分を見極めた上で製造計画を立てる必要があるでしょう。

そして、夏の予報はあくまでも平均的な天候の予想です。実際には厳しい暑さが訪れたり、急に涼しくなったりと、気温の変化が大きくなることが予想されます。また、広範囲で冷夏になる可能性は低いと予想していますが、前線が停滞して雨が続く地域では冷夏になり、晴れる日が多い地域では暑い夏になるなど、地域によって偏りが出る可能性もあります。
近年は中長期の気象予測も精度が向上しており、1カ月前にはより細かい地域の特徴や週単位の変動が見えてきます。2週間前には異常天候早期警戒情報が発表されるなど、極端な暑さや寒さを知ることができます。

製造計画、需給調整、販促、価格調整などといったオペレーションに合わせて、ぜひ気象情報をご活用ください。

5.    日本気象協会の「eco×ロジ」プロジェクトについて

近年、飛躍的に精度が向上している天気予報は、この15年で30%も精度が向上しているといわれています。
日本気象協会では独自の気象予報も開発しており、無償で公開している気象情報よりも高度化した、最大6カ月先までの予測情報を提供しています。

日本気象協会の「eco×ロジ」プロジェクトでは、これらの高度化した気象のデータと商品の販売データなどを解析することにより、未来の商品需要量を高精度で予測する「商品需要予測」を行っています。
あらかじめ必要な商品の量がわかれば、つくりすぎによる食品ロスや製品の廃棄量を減らすことができます。
また年間計画立案時やマーケティング部門でのシーズン商品の立ち上がり・終売の予測に気象情報を活用することで、販売・広告戦略に活用いただけます。

日本気象協会ではSDGsで掲げられている「目標12:つくる責任 つかう責任」の達成に向けて、活動を続けて参ります。

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一般財団法人 日本気象協会
防災ソリューション事業部 シニアデータアナリスト
気象予報士・データ解析士・健康気象アドバイザー・防災士
小越 久美(おこし くみ)

筑波大学第一学群自然学類地球科学(気候学・気象学)専攻修了。
2004年から2013年まで、日本テレビ「日テレNEWS24」にて気象キャスターを務める。
現在は日本気象協会の商品需要予測事業にて、食品、日用品、アパレル業界などのマーケティング向け解析や商品の需要予測を行い、さまざまな企業の課題を解決するコンサルティングを行っている。
著書に「かき氷前線予報します~お天気お姉さんのマーケティング~」「天気が悪いとカラダもココロも絶不調 低気圧女子の処方せん」がある。

PDFダウンロード:【日本気象協会レポート】2019年の夏は天候不順の可能性_

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