(防災レポートVol.6 )台風第10号、観測史上最強クラスの勢力で九州へ接近、上陸の可能性(速報) 6日、九州地方では、洪水・土砂災害・交通や物流ストップの恐れ
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日本気象協会は、台風第10号に伴う今後の大雨などの見通し(9月2日13時時点)に関する情報を、防災レポート(速報)として発表します。
9月1日(火)21時に小笠原近海に台風第10号が発生しました。
今後、台風第10号は、勢力を強めながら西から北へ進み、9月6日(日)から7日(月)にかけて九州に接近する見込みです。(図 1)
九州・四国・中国地方では、台風に伴う大雨や暴風による影響により、洪水や土砂災害の他、交通機関の寸断等による物流ストップの恐れがあります。
台風第10号は、6日9時に九州の南の海上で930hPa、最大風速50m/s(特別警報級)の勢力まで発達することが予想され観測史上最強クラスの勢力※で九州へ接近、上陸する可能性があります。
進路に大きな幅があるため、広い範囲での警戒が必要となりますが、現時点で、特に警戒する事項と地域について以下にまとめました。
(1)九州山地の東側斜面での大雨 -これまでに経験したことがないような雨の可能性も-
(2)九州・中国・四国地方の暴風、高波・高潮 -停電や通信障害の恐れも-
1.【雨】 九州山地の東側斜面での大雨 -これまでに経験したことがないような雨の可能性も-
台風第10号が、西日本に最接近した場合、期間中の最大24時間雨量が400mm、その既往最大比(過去の最大値との比較)が150%を超えるエリアが九州山地の東側斜面に予想されています。これらの地域では、これまでに経験したことがないような雨の降り方をする可能性があることから、洪水による浸水害や土砂災害が発生する可能性が高いと考えられます。
また期間中の最大24時間雨量は、ダムが事前放流を判断する目安となっています。特に大分県・宮崎県・熊本県・福岡県内の大河川上流域のダムでは事前放流を行う可能性があります。ダムの放流情報や河川水位の変化に対する早めの注意が必要です。
そして、西日本の広い地域では数時間の強雨によって中小河川の氾濫やがけ崩れなどが発生する可能性があり、注意が必要です。
2.【風】 九州・中国・四国地方の暴風、高波・高潮 –停電や通信障害の恐れも-
台風第10号による暴風は、9月6日~7日にかけて、西日本の広い地域で発生する可能性があります。最大瞬間風速30m/sの確率が50%以上の地域は、九州から中国・四国地方に広がり、特に同確率70%以上の地域は、九州・四国地方・山口県に広がっています。これらの地域では、電線や通信線の切断などによる停電や通信障害の恐れがあります。
また、台風の中心が南の海上の離れた海域にある場合から、海岸沿いでは、高波に対する注意が必要となります。さらに、台風の中心が接近する地域では、高潮による沿岸地域の浸水への警戒が必要です。
3.事前の備えについて
台風は、事前の予報よりも早めに接近する場合や急に進路が変わる可能性があります。避難の際は、以下に注意して行動しましょう。
・早めに、ハザードマップなどによる周辺地域の危険箇所・避難場所を確認しましょう。
・最新の台風情報や避難情報をチェックしましょう。
・避難の際には、ウィルス感染対策にも配慮しましょう。
本情報は 2020 年9月 2 日 13時時点の予測資料から作成したものです。最新の気象情報は 日本気象協会の天気予報専門サイト「tenki.jp」https://tenki.jp/ でご確認ください。
補足事項
1)メインシナリオ予測:51通りの予測シナリオのうち、最も確率の高いシナリオ。
2)過去最大雨量の比較対象期間と比較対象データ:2006年~2019年の国土交通省解析雨量(1kmメッシュ雨量)。
※観測史上最強クラスの勢力について
統計期間1951年~2019年第29号までの上陸時(直前)の中心気圧が低い台風
出典:気象庁ホームページ
一般財団法人 日本気象協会 社会・防災事業部 担当部長 技術士(総合技術監理部門、建設部門) 気象予報士 後藤 祐輔(ごとう ゆうすけ) 筑波大学第一学群自然学類 卒業 土砂災害向けの降雨解析業務、ダム管理向けの降雨予測・流入量予測システム構築・運用等の防災関連業務を行っている。 |
以上
PDFダウンロード:【日本気象協会_防災レポートVol.6】台風第10号の見通し(速報)_