(防災レポート Vol.11)前線に伴う今後の大雨・災害の見通し(速報)
Report
日本気象協会は、前線に伴う今後の大雨と災害の見通し(8月12日10時時点)に関する情報を、防災レポート(速報)として発表します。
ポイント
・8月12日(木)から14日(土)にかけて、九州北部から中国地方西部、北陸から岐阜県・長野県の地域では、近年の観測値を大きく上回る豪雨の可能性があり、災害発生危険度が極めて高い。
・36名の犠牲者が出た平成21年7月中国・九州北部豪雨に匹敵する人的被害の発生可能性がある。
前線が本州付近に停滞し、前線に向かって水蒸気を大量に含んだ暖かく湿った空気が流れ込んでいます。今日12日(木)から明後日14日(土)にかけて、西日本から東日本にかけての広い範囲で大雨になるところがあり、大きな災害が発生するおそれがあります。
日本気象協会独自の「JWAアンサンブル雨量予測」で算出している「過去最大雨量との比(既往最大比)」(図1)を見ると、九州から北陸・信越地方にかけて過去最大値に匹敵または超える雨量となることが予想されています。とくに九州北部から中国地方西部、北陸から岐阜県・長野県の地域では、既往最大比が120%、150%を超える可能性がある地点があります。
日本気象協会が静岡大学牛山素行教授との共同研究で調査した、平成30(2018)年7月豪雨時の降水量と犠牲者の発生の関係(※)によると、犠牲者が発生した地点のほとんどが既往最大比100%以上となっていました。また、既往最大比150%前後から犠牲者の発生数が急増する可能性が示されており、災害発生危険度が極めて高いことを示していると言えます。
日本気象協会が過去の被害データと既往最大比の関係をもとに人的被害の推計を行ったところ、平成21年7月中国・九州北部豪雨(犠牲者36名)に匹敵する人的被害が発生する可能性があり、雨の降り方がさらに強まれば、さらに人的被害が増えるおそれもあります。
今回の大雨の特徴は、72時間またはそれ以上の長時間にわたって大雨が続くことです。長時間大雨が続いて土壌の水分量が多くなった状況では、やや強い雨が降っただけでも土砂災害が発生する可能性があります。今年7月3日に静岡県熱海市で土石流が発生した事例では、7月1日から3日にかけて長時間降雨が続いた後、時間40ミリ程度の雨量が引き金となった可能性があります。
大雨は18日(水)ごろにかけても降り続くおそれがあります。最新の気象情報を確認し、厳重な警戒を続けてください。
※本間基寛・牛山素行:豪雨災害における人的被害ポテンシャルの推定に関する一考察 ―平成30年7月豪雨を事例に―,第38回日本自然災害学会学術講演会講演概要集,pp.47-48,2019
本情報は2021 年8 月12日 10 時時点の予測資料から作成したものです。最新の気象情報をご確認ください。
※日本気象協会の天気予報専門メディア「tenki.jp」では、「警報・注意報」「地震情報」「津波情報」「火山情報」「台風情報」などの防災情報(https://tenki.jp/) を24時間365日提供しています。
本間 基寛(ほんま もとひろ) 一般財団法人 日本気象協会 社会・防災事業部 専任主任技師 北海道生 北海道大学理学部卒業,東京大学大学院理学系研究科修士課程修了 京都大学防災研究所特任助教(非常勤) 静岡大学防災総合センター客員准教授(非常勤) 博士(工学) 技術士(建設部門:河川、砂防及び海岸・海洋) 気象予報士 |
以上
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