(防災レポートVol.12) 前線に伴う今後の大雨・災害の見通し(第2報)
Report
日本気象協会は、前線に伴う今後の大雨と災害の見通し(8月13日10時時点)に関する情報を、防災レポート(第2報)として発表します。
ポイント
・8月15日(日)にかけて、九州北部、中国地方、近畿北部、東海・北陸、関東甲信の各地域では、近年の観測値を大きく上回る豪雨の可能性があり、災害発生危険度が極めて高い。
・雨量がさらに増えた場合、数十名規模の犠牲者が発生する可能性がある。
前線が本州付近に停滞し、前線に向かって水蒸気を大量に含んだ暖かく湿った空気が流れ込んでいます。既に西日本中心に大雨となっており、気象庁は本日8時45分に広島市に対して大雨特別警報を発表しました。明後日15日(日)にかけて、西日本から東日本にかけての広い範囲で大雨になるところがあり、大きな災害が発生するおそれがあります。避難などされている方々は、引き続き安全な場所へとどまることが必要です。また、復旧作業にあたられる方々は、今後の雨量情報を注視していただき、身の安全の確保を最優先に対応にあたってください。
日本気象協会独自の「JWAアンサンブル雨量予測」で算出している7種類の降雨指標(3、6、12、24、48、72時間雨量及び土壌雨量指数)の「過去最大値との比(既往最大比)」(図1)を見ると、西日本から東日本にかけて過去最大値に匹敵または超える雨量となることが予想されています。とくに九州北部から中国地方西部、北陸から岐阜県・長野県の地域では、既往最大比が120%、150%を超える可能性がある地点があります。
日本気象協会が静岡大学牛山素行教授との共同研究で調査した、平成30(2018)年7月豪雨時の降水量と犠牲者の発生の関係(※1)によると、犠牲者が発生した地点のほとんどが既往最大比100%以上となっていました。また、既往最大比150%前後から犠牲者の発生数が急増する可能性が示されており、災害発生危険度が極めて高いことを示していると言えます。
また、日本気象協会は牛山素行教授と共同で、過去の被害データと既往最大比の関係をもとに豪雨災害犠牲者の発生可能性を推計する手法の研究開発を行っています(※2)。その成果をもとに、今回予測されている雨量に対して犠牲者の発生可能性の推計を行った結果が図2になります。九州北部、中国、近畿、東海、北陸、関東甲信の広い範囲で人的被害が発生し、数十名規模の犠牲者が発生する可能性があります。とりわけ、北陸地方及び長野県北部では既往最大比の値が大きくなり、災害犠牲者が発生する危険度が高くなることが予測されています。広域での同時多発的な土砂災害の発生、河川の氾濫に厳重な警戒が必要です。危険なところにお住まいの方は、危険が迫る前に安全な場所に移動するようにしてください。
大雨は18日(水)ごろにかけても降り続くおそれがあります。最新の気象情報を確認し、厳重な警戒を続けてください。
※1本間基寛・牛山素行:豪雨災害における人的被害ポテンシャルの推定に関する一考察 ―平成30年7月豪雨を事例に―,第38回日本自然災害学会学術講演会講演概要集,pp.47-48,2019
※2 本間基寛・牛山素行:豪雨災害における人的被害ポテンシャルの推定の試み,日本災害情報学会第22回学会大会予稿集,pp.24-25,2020.
本情報は2021 年8 月13 日 10 時時点の予測資料から作成したものです。最新の気象情報をご確認ください。
※日本気象協会の天気予報専門メディア「tenki.jp」では、「警報・注意報」「地震情報」「津波情報」「火山情報」「台風情報」などの防災情報(https://tenki.jp/) を24時間365日提供しています。
本間 基寛(ほんま もとひろ) 一般財団法人 日本気象協会 社会・防災事業部 専任主任技師 北海道生 北海道大学理学部卒業,東京大学大学院理学系研究科修士課程修了 京都大学防災研究所特任助教(非常勤) 静岡大学防災総合センター客員准教授(非常勤) 博士(工学) 技術士(建設部門:河川、砂防及び海岸・海洋) 気象予報士 |