防災レポート2022 Vol.1 前線に伴う今後の大雨・災害の見通し(第1報)
Report
【2022年8月12日追記あり】
日本気象協会は、前線に伴う今後の大雨と災害の見通し(8月8日12時時点)に関する情報を、防災レポート(第1報)として発表します。
ポイント
・東北地方北部では、8月9日(火)から1週間程度、断続的に降水量が多くなる見通し。8月11日(木)まで72時間雨量が600mm前後に達し、これまでの観測の最大値の1.5倍を超える記録的な大雨となるおそれがある。
・長時間の大雨となることから、やや強い雨が降っただけでも土砂災害が発生する可能性があり、警戒が必要。
日本海から北海道に延びる前線が明日9日(火)以降、東北地方に南下し、1週間程度にわたって停滞する見込みです。前線に向かって、南西から暖かく湿った空気が流れ込む影響で、青森県・秋田県・岩手県など東北地方北部を中心に、断続的に雨量が多くなる見通しです。
日本気象協会独自の「JWAアンサンブル雨量予測」では、明日9日(火)から11日(木)にかけての72時間雨量が、東北地方北部の多いところで600mm前後に達する予測となっています(図1)。
この値は、これまでに観測された雨量の最大値との比(既往最大比)では150%超に相当します。日本気象協会と静岡大学牛山素行教授との共同研究の結果(※1)によると、既往最大比150%を超えると犠牲者の発生数が急増する可能性があり、災害発生危険度が極めて高くなるおそれがあることを示していると言えます。

その過去最大雨量値との比(右)の予測(過去最大値の集計期間:2006年5月~2021年12月)。
東北地方北部では、先週の8月2日(火)から3日(水)にも、200mm以上の雨量となり、72時間雨量では既往最大比が100%~130%となる地域がありました(図2)。今回予想されている雨量は、これをさらに上回る可能性があります。
今回の大雨の特徴は、72時間またはそれ以上の長時間にわたって大雨が続くことです。長時間大雨が続いて土壌の水分量が多くなった状況では、時間雨量30mm前後の雨が降っただけでも土砂災害が発生する可能性があります。昨年の7月3日に静岡県熱海市で、8月15日に長野県岡谷市でそれぞれ発生した土砂災害では、2~3日間程度雨が降り続いた後、1時間に30~40mmの雨がきっかけで発生しました。災害の危険性があるところにお住まいの方は、雨が強くなってからではなく、早めの避難を心掛けるようにしてください。
最新の気象情報を確認し、厳重な警戒をしてください。

その過去最大値との比(過去最大値の集計期間:2006年5月~2021年12月)。
※1 本間基寛,牛山素行:豪雨災害における犠牲者数の推定方法に関する研究,自然災害科学,Vol. 40,特別号,pp. 157-174,2021.
本情報は2022 年8 月8 日 7 時時点の予測資料から作成したものです。最新の気象情報をご確認ください。
※日本気象協会の天気予報専門メディア「tenki.jp」では、「警報・注意報」「地震情報」「津波情報」「火山情報」「台風情報」などの防災情報(https://tenki.jp/) を24時間365日提供しています。
![]() | 本間 基寛(ほんま もとひろ) 一般財団法人 日本気象協会 社会・防災事業部 担当部長 北海道生 北海道大学理学部卒業,東京大学大学院理学系研究科修士課程修了 京都大学防災研究所特任助教(非常勤) 静岡大学防災総合センター客員准教授(非常勤) 博士(工学) 技術士(建設部門:河川、砂防及び海岸・海洋) 気象予報士 |
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