防災レポート2023 Vol.1 梅雨前線に伴う今後の大雨・災害の見通し(第1報)
Report
日本気象協会は、梅雨前線に伴う今後の大雨と災害の見通し(7月14日12時時点)に関する情報を、防災レポート(第1報)として発表します。
ポイント
・東北地方北部の日本海側では、梅雨前線が停滞する影響で7月15日(土)から16日(日)にかけて大雨となるおそれがある。
・秋田県では、16日(日)にかけて48時間雨量の既往最大比が150%を超える可能性がある。
・強雨域の予測位置にずれが生じる場合、秋田県周辺の岩手県、青森県などでも大雨となるおそれがある。
日本海から東北地方に向けて延びる梅雨前線の影響で、東北地方では14日(金)から雨が降る見込みです。前線は16日(日)にかけて東北地方に停滞し、特に東北地方北部では日本海側を中心に大雨への警戒が必要です。
日本気象協会独自の「JWA統合気象予測(※1)」では、15日(土)から16日(日)までの秋田県の48時間雨量が多いところで400mm前後に達する予測となっています。場所によって、これまでに観測された雨量の最大値との比< 既往最大比(※2) >が150%を上回る可能性があります(図1)。日本気象協会と静岡大学牛山素行教授との共同研究の結果(※3)によると、既往最大比が150%を超えると犠牲者の発生数が急増する可能性があり、災害発生の危険度が極めて高いことから厳重な警戒が必要です。
秋田県内を流れる一級河川の雄物川(おものがわ)では、2017年7月に梅雨前線による大雨の影響で氾濫が発生しました(※4)。今回の48時間雨量予測と2017年7月雄物川氾濫時の48時間雨量(解析雨量)を比較すると(図2)、200mm以上の雨量となる強雨域の範囲が類似しており、雄物川周辺では氾濫が発生するおそれがあるため、厳重な警戒が必要です。強雨域の範囲が予測からずれた場合は、秋田県だけではなく、周辺の岩手県や青森県などでも大雨となる可能性があり、雄物川以外の河川でも氾濫の危険度が高まるおそれがあります。河川の近くにお住まいの方は、市町村が作成している洪水ハザードマップなどを早めに確認し、浸水の可能性や避難する場所・経路などを把握するとともに、避難への備えを行ってください。
今回の大雨の特徴は、48時間前後と長時間にわたって大雨が続くことです。長時間大雨が続いて土壌の水分量が多くなった状況では、やや強い雨が降っただけでも土砂災害が発生する可能性があります。山の斜面近くなど災害の危険性があるところにお住まいの方は、雨が強くなってからではなく、早めの避難を心がけるようにしてください。
また、線状降水帯が発生すると予測を上回る雨量となるおそれがあります。最新の気象情報を確認し、厳重な警戒をしてください。
本情報は2023年7月14日7時時点の予測資料から作成したものです。最新の気象情報をご確認ください。
※1 JWA統合気象予測:https://www.jwa.or.jp/news/2023/02/19157/
※2 既往最大比:解析雨量が1kmメッシュ化された2006年5月以降に観測された雨量の最大値との比のこと
※3 本間基寛,牛山素行:豪雨災害における犠牲者数の推定方法に関する研究,自然災害科学,Vol. 40,特別号,pp. 157-174,2021.
※4 https://www.jma-net.go.jp/akita/data/saigai/pdf/saigai_20170722_akita.pdf
※日本気象協会の天気予報専門メディア「tenki.jp」では、「警報・注意報」「地震情報」「津波情報」「火山情報」「台風情報」などの防災情報(https://tenki.jp/)を24時間365日提供しています。
寺田 真未子(てらだ まみこ) 一般財団法人 日本気象協会 社会・防災事業部 防災マネジメント課 気象予報士 |
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