(防災レポート Vol.3)梅雨前線に伴う今後の大雨の見通し(速報)
Report
日本気象協会は、梅雨前線に伴う今後の大雨の見通し(7月7日13時時点)に関する情報を、防災レポート(速報)として発表します。
ポイント
・九州北部では既に、近年の過去最大雨量を大きく上回っており、危険な状態が続く。
・岐阜県、長野県周辺で過去最大雨量を上回る豪雨の可能性があり、災害発生危険度が極めて高い。
1. 九州北部では既に記録的な大雨
梅雨前線が本州付近に停滞し、広い範囲で大気が非常に不安定な状態が続いています。九州北部では記録的な大雨となっており、本日13時時点の最大24時間雨量では500ミリを超える地点が出ており、これまでの観測データの既往最大値(過去の最大値)に比べて150%を超えているところもあります(図1)。
これまでに降った大雨により大分県において筑後川が氾濫し、浸水が始まっています。九州北部では本日の夜までにさらなる大雨が予測されていますが、既に降った大雨の影響で、雨脚が強まると河川の水位が急激に上昇したり、土砂災害が発生しやすい状況となっています。避難などされている方々は、引き続き安全な場所へ留まることが必要です。また、復旧作業にあたられる方々は、今後の雨量情報を注視していただき、身の安全の確保を最優先に対応にあたってください。

2. 岐阜県・長野県周辺で大雨の危険性
活発な活動を続ける梅雨前線は、日本海側の地域に沿うようにのびていて、水蒸気を大量に含んだ暖かく湿った空気が本州に流れ込んでいます。明日8日(水)から明後日9日(木)にかけて、近畿・東海地方では、多いところで最大24時間雨量で200~300ミリの大雨が予想されています(図2)。
日本気象協会独自の「JWAアンサンブル雨量予測」で算出している「過去最大雨量との比」を見ると、岐阜県および長野県南部の県境は、過去最大の雨量を超過する雨が降る可能性が予想されています。これは、「たくさん雨が降るところが注意すべき場所」ではなく、「その場所にとってたくさん雨が降るところが注意すべき場所」であり、「その場所」がよく分かる情報となっています。最大24時間雨量だけでは、広い範囲で200~300ミリが予測されていますが、過去最大雨量との比を見ることで、地域の危険度をわかりやすく可視化することができています。
また、梅雨末期の大雨の特徴として、線状降水帯の発生などによる局所的な豪雨では、数時間前にならないとその発生や雨量を正確に予測が難しいことがあります。線状降水帯の発生などにより、雨量がメインシナリオ予測1)よりも上振れするような場合では、岐阜県および長野県南部では過去最大比が150%超となる可能性もあります。
日本気象協会が静岡大学牛山素行教授との共同研究で調査した、平成30(2018)年7月豪雨時の降水量と犠牲者の発生の関係(※)によると、犠牲者が発生した地点のほとんどが既往最大比100%以上となっていました。また、既往最大比150%前後から犠牲者の発生数が急増する可能性が示されており、災害発生危険度が極めて高いことを示していると言えます。
厳重な警戒を続けてください。

※本間基寛・牛山素行:豪雨災害における人的被害ポテンシャルの推定に関する一考察 ―平成30年7月豪雨を事例に―,第38回日本自然災害学会学術講演会講演概要集,pp.47-48,2019
本情報は2020 年7 月 7 日 13 時時点の予測資料から作成したものです。最新の気象情報をご確認ください。
1)メインシナリオ予測:51通りの予測シナリオのうち、最も確率の高いシナリオ。
<ご参考>
(防災レポート Vol.2)熊本豪雨の降水量の特徴と今後の見通しについて(速報)
https://www.jwa.or.jp/news/2020/07/10378/
![]() | 本間 基寛(ほんま もとひろ) 一般財団法人 日本気象協会 社会・防災事業部 専任主任技師 北海道生 北海道大学理学部卒業,東京大学大学院理学系研究科修士課程修了 京都大学防災研究所特任助教(非常勤) 静岡大学防災総合センター客員准教授(非常勤) 博士(工学) 技術士(建設部門:河川、砂防及び海岸・海洋) 気象予報士 |