JWA News(SDGs レポートVol.4)気候変動・・・

(SDGs レポートVol.4)気候変動が経済に与えるリスクと対策 〜10年間で250兆円の経済損失~
News

世界気象機関(WMO)は50回目の「アースデイ」(地球環境を考える日)を迎えた2020年4月22日に、“The Global Climate in 2015-2019”(2015年~2019年までの気候変動状況のまとめ)を公表しました。発表内容から「世界の気温」に注目してみると、以下のことがわかりました。

・記録史上どの5年間よりも最も気温が高い(産業革命前に比べて平均1.1℃上昇)
・2011年~2015年比でも平均0.2℃上昇した(特にCO2に関しては18%増加)

なお、今年1月~3月の世界の平均気温は2016年に次いで2番目に高く(アメリカ海洋大気庁,2020)、今年に入っても温暖化傾向は衰え知らずの状況です。
私たちが気候変動枠組条約 COP21パリ協定(2015年)で提唱された「1.5℃目標」を実現するためには2030年までにCO2を2010年比で45%削減する必要があります(IPCC,2018)。つまりここ10年が、今後人類が地球で住み続けられるか否かの正念場ということです。2020年4月現在、新型コロナウィルスによる外出禁止や自粛などにより一時的にCO2排出量が減った、という報道もあります。しかしわたしたちは「リーマンショック」(2008年9月に発生)時にCO2排出量が一時的に下がったのち経済回復によって「リーマンショック」前よりも増加に転じた、という過去を知っているだけに、今回のCO2排出量減少の報道は楽観視できません。
日本気象協会SDGsレポート4回目は企業、個人の皆さんと切り離せない「気候変動と経済」の問題について考えていきたいと思います。

1.気候変動による経済への影響

今でも「環境は大事だけどそれよりも利益が大事」というように、経済か環境かという議論を耳にしますが、「環境」と「経済」は決して同じ階層の問題ではないと考えます。下図はスウェーデンにあるレジリエンス研究所がSDGs17の目標を「経済圏」「社会圏」「生物圏」によって構成した、通称「SDGsウェディングケーキ」と呼ばれるものです。

図1:SDGsウェディングケーキ      出典)Azote Images for Stockholm Resilience Centre, Stockholm University
図1:SDGsウェディングケーキ 出典)Azote Images for Stockholm Resilience Centre, Stockholm University

一番下の段が「生物圏」と呼ばれるエリアで「目標6:安全な水とトイレを世界中に」「目標13:気候変動に具体的な対策を」「目標14:海の豊かさを守ろう」「目標15:緑の豊かさも守ろう」の4つの目標が入っており、いずれも我々が地球上で暮らす上で必要不可欠である「環境」に関する目標です。その上に「社会圏」そしてその上に「経済圏」に関する目標が乗っています。環境システムが生命の基盤であり、それが正常に機能することで私たちは最低限の安心を得て社会を作ることができます。社会が成り立ってようやく経済も成り立つという構造です。現在一番下の「環境」が非常に危うく、特に目標13の気候変動に関しては他の「生物圏」3つの目標に大きく影響を与える為一番重要な目標といえます。根っこが腐ると茎が育たず、葉も出ないのと同じように環境問題がぐらつき、足元が危うい中での安心感のある社会、安定した経済活動は難しいというのは想像に容易でしょう。

2.10年間で250兆円の経済損失

図2:自然災害によって甚大な経済的損失があった上位10ヵ国 国別経済損失額(単位10億ドル)     出典)国連国際防災戦略事務局“Economic Losses, Poverty & Disasters 1998-2017”を元に作成
図2:自然災害によって甚大な経済的損失があった上位10ヵ国 国別経済損失額(単位10億ドル) 出典)国連国際防災戦略事務局“Economic Losses, Poverty & Disasters 1998-2017”を元に作成

環境が脅かされると、経済にも大きな損害を与えます。例えば英国の国際援助団体クリスチャン・エイドによると昨年日本を襲った台風19号による想定被害額は約1兆6000億円に上り、農林水産関係だけを見ても3400億円を超える被害額が報告されています(農林水産省,2019)。また、1998年~2017年の間の自然災害による経済損失額は世界全体で2兆9080億ドル(約330兆円)に上り、損失の大きさを国別で見ると図2の通り日本は3位に位置しています。その内、気候変動に伴う自然災害による経済損失は2兆2500億ドル(約252兆円)に上っており、その前の20年に比べて150%以上増加しました(国連国際防災戦略事務局,2018)。
自然災害だけではなく、気候変動に伴う生態系の変化による原材料価格高騰も経済へ打撃を与えます。
このような自然災害や生態系変化に対して適応策を講じながらも、根本原因である温室効果ガス排出(特に66%を占めるCO2排出)を削減するための緩和行動をとることが最も重要で急務です。

3.企業向け気象予測と解析力で緩和と適応に向けた具体的対策を支援

日本気象協会は企業向けに国内外問わず精度の高い気象予測の提供や、創設以来70年間培ってきた調査解析技術を持って、気候変動への緩和・適応に向けた企業の具体的な行動をサポートしています。今回はその中でも2つご紹介します。

① eco×ロジプロジェクト 商品需要予測サービス(緩和策・適応策)

気象×POS・出荷量・製造量・SNSデータ等で解析を行い、需要予測式を構築。その後最新の気象予測データを入れて需要予測を提供しています。まずは気象と商品の関係性を解析して傾向をつかみ、製造量や出荷量、在庫予測だけではなくマーケティング活動でもご利用いただいています。
データに基づいたオペレーションを行うことで、最適化が起こり無駄な廃棄や配送によるCO2やコストの削減を実現しています。

eco×ロジプロジェクトの詳細: https://ecologi-jwa.jp/

図3:eco×ロジプロジェクト 商品需要予測サービスイメージ
図3:eco×ロジプロジェクト 商品需要予測サービスイメージ

② 気候変動適応策・緩和策の支援

日本気象協会は、20年以上にわたって国や地方自治体の気候変動関連業務を支援しています。近年では、IPCC第1作業部会(WG1)国内支援事務局に関する委託事業(文部科学省一般競争入札)、地域適応コンソーシアム中部地域事業、近畿地域事業(環境省)、地域適応計画策定関連業務(地方自治体)等を受託し、科学的観点からの調査や政策立案まで幅広いサービスを提供しています。緩和策については、風力発電や太陽光発電等の再生可能エネルギー導入推進(風況調査、導入ポテンシャル調査、環境アセスメント等)、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)に基づく地方公共団体実行計画の策定、開発途上国におけるJCM※1の実施等を支援しています。
なお、企業の気候変動影響評価も支援しており、近日中に発表を予定しています。
※1:二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism)の略称。

気候変動緩和策・適応策支援の詳細: https://www.jwa.or.jp/service/climate-change/

図4:日本気象協会がビジネス展開している海外の国と地域
図4:日本気象協会がビジネス展開している海外の国と地域

気象は「物理学的手法により未来を予測できるもの」でもあります。未来を事前に知ることで、危機回避をすることができ、またうまく活用することで環境負荷を減らすことが可能です。
気象を活用することで将来のリスクを回避することができ、また、日々のオペレーションに組み込むことで、大量生産大量廃棄から需要分だけ作って供給するエコで効率的な経営に切り替えていただくことが可能です。
今後気候変動により昨年の台風19号のような大型台風や熱波、豪雨、干ばつなどの自然災害は増え、悪化すると予想されています。一人一人が自分事として捉えて足元がぐらついている事実に向き合い、今ある情報を活用しながら行動を変えることが今後の経済の成長においても必要不可欠だと考えます。

4.eco×ロジ プロジェクトが掲げるSDGsの目標

eco×ロジ プロジェクトは2017年から【食品ロス・廃棄ロス削減】【CO2の排出削減】という課題に対して事業を行ってきました。SDGsでは「12:つくる責任つかう責任」、「13:気候変動に具体的な対策を」に当たります。
上記2つの目標に重きを置きながら、「7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、「8:働きがいも経済成長も」、「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」、「17:パートナーシップで目標を達成しよう」、以上4つの目標も同時に意識して活動しています。

日本気象協会は気象を扱うプロ集団として、今後も気象の力で社会の持続的な発展に貢献していきます。また、目標を達成するためには一人一人の意識向上が最も大切です。より多くの方に地球環境に意識を向けていただき、SDGsの目標を念頭に置きながら自然と調和できる社会づくりを同時に推進していきます。

JWA SDGs
一般財団法人 日本気象協会
防災ソリューション事業部
先進事業課
SDGsプロモーター
古賀 江美子


奈良県出身。小さい頃から自然に囲まれた生活を行う。
学生時代、ドイツでの農地開墾ボランティアや自然豊かなワシントン州立大学への留学を通して「異なるバックグラウンドへの相互理解の構築と連携」を体験的に身につける。
卒業後、上京して便利さと自然のバランスに違和感を覚え、会社員業務の傍ら自然に対する学びの体系化を目指して物理学や東洋哲学など様々な領域の学問を独習。
自らの学びを実現する場として2013年日本気象協会に入社。「eco×ロジプロジェクト」に参画し、気候変動や食品ロス、廃棄ロスの根深い問題に取り組む。
「ステークホルダー間の相互理解と連携」及び「一人一人の意識向上と行動変革」をテーマに、企業間連携の企画推進及び広報活動を行っている。
eco×ロジ
eco×ロジ

 

PDFダウンロード:【レポート】JWA SDGsレポートVo.4_