(日射量レポートVol.4)「2022年の日射量」
2022年の日射量分布は、例年と比較して、西日本で「やや多い」~「多い」傾向
Report
日本気象協会では、2015年から毎年、日本全国の年間日射量※1を地域別にまとめた「日射量レポート」を発表しています。今年も「2022年の日射量」レポートを発表します。
※1 全国にある約840カ所のアメダス観測地点の日照時間※2をもとにした「推定日射量値」から算出した1年間の合計日射量。
※2 直射日光が地表面に当たっている時間。一般的に日照時間が多いほど日射量も多い傾向がある。なお2021年3月2日をもって、気象台などの一部地点を除いて日照計による観測を終了した。観測終了後は、気象衛星観測データなどを用いた「推計気象分布(日照時間)」が代わりに提供されている。
1.2022年は、どのような年だったのか
日本気象協会は、2022年12月に日本気象協会に所属する気象予報士のうち110名の調査をもとに決定した「2022年お天気トレンド大賞」を発表しています(図1)。

2022年は「早い梅雨明け」「酷暑日」などがお天気トレンド大賞に入っているように、6月下旬の記録的な高温が記憶に残る1年でした。6月下旬の猛烈な暑さに伴い電力需要が増加したことから、6月26日から30日にかけて「電力需給ひっ迫注意報」が連日発表されました。また、電力需給のひっ迫は高温時に限らず低温時にも発生し、例えば3月22日には、地震による火力発電所の停止・出力低下と南岸低気圧に伴う積雪や低温等が影響して、「電力需給ひっ迫警報」が発表されました。
2.2022年の日射量 例年との比較
2022年の日射量を例年※3と比較しました(図2)。2022年の年間日射量は、東北および沖縄・奄美を除いて、「並」~「多い」の地点が多く見られました。特に、西日本では例年と比較して「やや多い」~「多い」傾向が見られました。
※3 例年の日射量:過去10年(2012年~2021年)の年間日射量の平均値。

3.2022年の日射量 前年(2021年)との比較
2022年の日射量を前年(2021年)の日射量と比較しました(図3)。2022年の年間日射量は、北日本および沖縄・奄美では「並」~「やや少ない」地点が多く見られました。一方で、西日本の広い範囲では前年と比較して「やや多い」傾向が見られました。

4.2022年の日射量まとめ
表1に「2022年の日射量」をまとめました。表1の内容については、全国約840地点のアメダスの日照時間から全天日射量※4を推定する日本気象協会の独自技術「アメダス推定日射量」をもとに分析しています。オレンジ色の部分は例年または前年(2021年)の日射量と比べて「かなり多い」「多い」「やや多い」地域、青色の部分は「やや少ない」「少ない」「かなり少ない」地域、白色の部分は例年並(または前年並)の地域を表します。
※4 地表面が受ける太陽からのエネルギー量。

5.2022年の日射量 月変化
気象庁の日射量観測データにより作成した、札幌、仙台、東京、大阪、福岡、那覇を対象とした日射量の月変化(2022年、前年、例年)を図4に示します。
4月は北日本を中心に高気圧に覆われることが多かったため、札幌では日射量が例年よりも多くなりました。5月は北日本などでは晴れの日が多かったものの、沖縄・奄美では、前線や湿った空気の影響を受けやすく、曇りや雨の日が多くなりました。その結果、沖縄・奄美では、5月としては1946年の統計開始以来一位の多雨・寡照となりました。6月上旬から中旬にかけては、太平洋高気圧の張り出しが弱く、沖縄・奄美地方付近に前線が停滞することが多く、那覇では例年に比べ、日射量が少なくなりました。一方で、6月下旬には太平洋高気圧の張り出しが強まり、梅雨前線が北日本まで北上したため、東日本や西日本では日射量が多い傾向がみられました。札幌の6月から8月は、例年に近い値でしたが、日射量が多かった前年と比較すると少なくなりました。

6.「アメダス推定日射量」について
「太陽光」の強さを計る尺度として、「日射量」や「日照時間」があります。太陽光発電出力を推定するためには太陽からのエネルギー量を表す「日射量」の情報が必要です。しかし、気象庁が観測している全天日射量は全国48カ所※5と限られ、全国約840地点のアメダスの日照時間と比べると地点数が不足しています。
そこで日本気象協会は、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の研究事業を通じ、アメダスで観測された日照時間から全天日射量を高精度で推定するモデルを開発し、2013年から運用しています。また、2022年7月には、日照-日射モデルの改良により、推定精度の改善を行いました。※6
このモデルによる出力結果を日本気象協会では「アメダス推定日射量」として大手電力各社、新電力各社、太陽光発電事業者向けに提供しています。アメダス推定日射量は、エネルギー事業者向け総合APIサービス 「ENeAPI」などを通してリアルタイムで提供しているほか、過去データも提供可能です。これらの情報は、太陽光発電設備を建設する際の事業採算性評価・リスク評価や、故障診断を目的とした太陽光発電設備の運用監視などにご利用いただけます。
アメダス推定日射量
https://www.jwa.or.jp/service/energy-management/solar-power-02/
エネルギー事業者向け総合APIサービス ENeAPI
https://www.jwa.or.jp/service/energy-management/solar-power-06/
※5 2023年4月12日現在の観測地点数。
※6 日本気象協会、アメダス推定日射量サービスをリニューアル ~日照-日射モデルの改良により、日射量の推定精度を最大30%以上改善~(2022年7月25日 日本気象協会ニュースリリース)https://www.jwa.or.jp/news/2022/07/17360/
7.日本気象協会の太陽光発電事業者向けサービスについて
日本気象協会では「アメダス推定日射量」のほかにも、独自気象モデルによる日射量・太陽光発電出力予測情報(SYNFOS-solar)やひまわり8・9号データによる日射量推定・予測情報(SOLASAT 9-Now、SOLASAT 9-Nowcast)などを展開しています。これらの推定・予測情報は、太陽光発電事業に関わる幅広い分野で活用いただいています。
今回ご紹介した「2022年の日射量」レポートを太陽光発電や農業分野などの事業者の皆さまに参考情報としてご提供することで、ビジネス活動の活性化を支援いたします。
日射量・太陽光発電出力予測 SYNFOS-solar
https://www.jwa.or.jp/service/energy-management/solar-power-05/
ひまわり8・9号による日射量推定サービスSOLASAT 9-Now
https://www.jwa.or.jp/service/energy-management/solar-power-13/
ひまわり8・9号による日射量予測サービスSOLASAT 9-Nowcast
https://www.jwa.or.jp/service/energy-management/solar-power-12/
※本レポートの年間日射量の比較に関する用語
かなり多い :例年(前年)の+10%以上
多い :例年(前年)の+6~+10%
やや多い :例年(前年)の+2~+6%
並 :例年(前年)の-2~+2%
やや少ない :例年(前年)の-2~-6%
少ない :例年(前年)の-6~-10%
かなり少ない:例年(前年)の-10%未満
<過去発表した「年間日射量」の傾向資料について>
2015年 ( 2016.2.29 https://www.jwa.or.jp/news/2016/02/4564/ )
2016年 ( 2017.1.19 https://www.jwa.or.jp/news/2017/01/4421/ )
2017年 ( 2018.1.31 https://www.jwa.or.jp/news/2018/01/4298/ )
2018年 ( 2019.1.31 https://www.jwa.or.jp/news/2019/01/4202/ )
2019年 ( 2020.3.11 https://www.jwa.or.jp/news/2020/03/9493/ )
2020年 ( 2021.4.14 https://www.jwa.or.jp/news/2021/04/12959/ )
2021年 ( 2022.4.07 https://www.jwa.or.jp/news/2022/04/16357/ )
![]() | 一般財団法人 日本気象協会 環境・エネルギー事業部 エネルギー事業課 技師 気象予報士 宇都宮 健志(うつのみや けんじ) 名古屋大学大学院工学研究科(社会基盤工学専攻) 修士課程修了 日射や太陽光関連のデータ解析、コンサルタント業務に従事している。 |
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