(日射量レポートVol.2)「2020年の日射量」~2020年の日射量の分布は、北日本・東日本で「少ない」から「やや少ない」傾向~
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日本気象協会では、2015年から毎年、日本全国の年間日射量※1を地域別にまとめた「日射量レポート」を発表しています。今年も最新版「2020年の日射量」レポートを発表します。「日射量」という視点から、2020年がどのような1年だったかを早速振り返ってみましょう。
※1 全国にある約840カ所のアメダス観測地点の日照時間をもとにした「推定日射量値」から算出した1年間の合計日射量。
1.2020年は、どのような年だったのか
日本気象協会は毎年12月に、日本気象協会所属の気象予報士のうち100名が選ぶ「日本気象協会が選ぶお天気10大ニュースランキング」を発表しています。2020年は図1の10大ニュースが選ばれました。
2020年は、1月・2月には記録的な高温であったとともに、8月・9月には40℃超えの気温が観測されるなど、年間を通して気温の高い年となりました。また、台風の上陸こそなかったものの、7月には記録的な大雨で大きな被害が発生した年でもありました。梅雨の期間中は、曇りや雨の日が多く、各地で遅い梅雨明けとなりました。
https://www.jwa.or.jp/news/2020/12/11804/
2.2020年の日射量
表1に「2020年の日射量」をまとめました。全国約840地点のアメダスの日照時間※2から全天日射量※3を推定する日本気象協会の独自技術「アメダス推定日射量」をもとに分析しています。オレンジ色の部分は例年※4または前年(2019年)の日射量と比べて「多い」、青色の部分は「少ない」を表しています。それぞれ「やや多い(またはやや少ない)」「多い(または少ない)」「かなり多い(またはかなり少ない)」の三段階で評価しています。白色の部分は例年並(または前年並)を表します。
※2 直射日光が地表面に当たっている時間。一般的に日照時間が多いほど日射量も多い傾向がある。
※3 地表面が受ける太陽からのエネルギー量。
※4 例年の日射量:過去10年(2010年~2019年)の年間日射量の平均値。
2020年は、四国や九州などの一部地域を除いて全国的に例年や前年と比較して、「少ない」から「やや少ない」傾向が見られました。東北地方では、前年と比較して日射量が「かなり少ない」地域も見られました。
日射量の視点から見て、2020年の特徴のあった月を振り返ります。
7月
梅雨前線や東からの湿った気流の影響で、東日本、西日本を中心に曇りや雨の日が多く、日照時間、日射量がかなり少なくなりました。東日本、西日本では、1946年の統計開始以来最も日照時間が少ない7月となりました。例年と比較して、日射量が6割程度の地点も見られました。各地で梅雨明けが遅くなり、奄美地方は7月20日と過去最も遅く、関東甲信、東海、北陸、東北南部では8月に入ってからの梅雨明けとなりました。
8月
太平洋側を中心に晴れの日が多く、日射量も多くなりました。全国各地で猛暑となり、8月17日には静岡県浜松市で全国歴代1位タイとなる日最高気温41.1℃を記録しました。
3.2020年の日射量 例年との比較
2020年の日射量を例年と比較しました(図2)。2020年の年間日射量は、もともと日射の絶対量が多い7月に日射量が記録的に少なかったこともあり、北日本、東日本などの広い地域で、例年と比べ「少ない」から「やや少ない」傾向となりました。一方、四国や九州にかけては、「やや多い」地点もみられました。
4.2020年の日射量 前年(2019年)との比較
2020年の日射量を、前年(2019年)の日射量と比較しました(図3)。この結果、2020年の年間日射量は、北日本、東日本、近畿、中国などの広い地域で、前年より「少ない」から「やや少ない」傾向となりました。特に東北地方では、日射量が多かった前年と比較して日射量が「かなり少ない」地点も見られました。
5.「アメダス推定日射量」について
「太陽光」の強さを計る尺度として、「日射量」や「日照時間」があります。太陽光発電出力を推定するためには太陽からのエネルギー量を表す「日射量」の情報が必要です。しかし、気象庁が観測している全天日射量は全国48カ所※5と限られ、全国約840地点のアメダスの日照時間と比べると地点数が不足しています。
そこで日本気象協会は、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の研究事業を通じ、アメダスで観測された日照時間から全天日射量を高精度で推定するモデルを開発し、2013年から運用しています。
このモデルによる出力結果を日本気象協会では「アメダス推定日射量」として大手電力各社、新電力各社、太陽光発電事業者向けに提供しています。アメダス推定日射量は、リアルタイムでオンライン提供しているほか、1992年から蓄積している過去データも提供しています。これらの過去データは、日射量の長期的な変動解析などの目的でご利用いただけます。
アメダス推定日射量
https://www.jwa.or.jp/service/energy-management/solar-power-02/
※5 2021年4月5日現在の観測地点数。
6.日本気象協会の太陽光発電事業者向けサービスについて
日本気象協会では、「アメダス推定日射量」の他にも、一般財団法人 新エネルギー財団が主催する平成30年度新エネ大賞の「資源エネルギー庁長官賞」を受賞したSYNFOS-solar 1kmメッシュ(エリア日射量予測サービス)など、独自技術を活用した太陽光発電関連サービスを展開しています。
今回ご紹介した「2020年の日射量」レポートを太陽光発電や農業分野などの事業者の皆さまに参考情報としてご提供することで、ビジネス活動の活性化を支援いたします。
SYNFOS-solar 1kmメッシュ
https://www.jwa.or.jp/service/energy-management/solar-power-05/
日射量・太陽光発電出力予測API
https://www.jwa.or.jp/service/energy-management/solar-power-06/
※本レポートの年間日射量の比較に関する用語
- かなり多い :例年(前年)の+10%以上
- 多い :例年(前年)の+6~+10%
- やや多い :例年(前年)の+2~+6%
- 並 :例年(前年)の-2~+2%
- やや少ない :例年(前年)の-2~-6%
- 少ない :例年(前年)の-6~-10%
- かなり少ない:例年(前年)の-10%未満
<過去発表した「年間日射量」の傾向資料について>
2015年 ( 2016.2.29 https://www.jwa.or.jp/news/2016/02/4564/ )
2016年 ( 2017.1.19 https://www.jwa.or.jp/news/2017/01/4421/ )
2017年 ( 2018.1.31 https://www.jwa.or.jp/news/2018/01/4298/ )
2018年 ( 2019.1.31 https://www.jwa.or.jp/news/2019/01/4202/ )
2019年 ( 2020.3.11 https://www.jwa.or.jp/news/2020/03/9493/ )
一般財団法人 日本気象協会 環境・エネルギー事業部 エネルギー事業課 技師 気象予報士 宇都宮 健志(うつのみや けんじ) 名古屋大学大学院工学研究科(社会基盤工学専攻) 修士課程修了 日射や太陽光関連のデータ解析、コンサルタント業務に従事している。 |
以上
PDFダウンロード:【日本気象協会レポート】2020年の日射量_