(防災レポートVol.5) 令和2年7月豪雨における降水量の特徴(速報) ー 線状降水帯、異例の11時間以上継続 -
Report
※2020.7.20 16:15訂正
日本気象協会は、梅雨前線に伴う大雨の特徴に関する情報を、防災レポート(速報)として発表します。
ポイント
・九州地方で13事例の線状降水帯が発生し、このうち球磨川氾濫事例では11時間以上継続した。
・球磨川では計画降雨を超過、筑後川では計画降雨と同程度の雨量となった。
・九州各地の被害発生箇所の多くで、各継続時間雨量または土壌雨量指数のいずれかで既往最大値に匹敵または超過する雨量となっていた。
1. 令和2年7月豪雨における線状降水帯の発生状況
令和2年7月豪雨の期間中の7月3日から7月11日について、解析雨量(速報版解析雨量)を用いて、特定の条件1)を満たす線状降水帯を抽出しました(図1は7月3日正午~7月4日正午までの様子)。その結果、九州地方において13事例の線状降水帯を確認しました。球磨川で大規模な洪水氾濫が発生した事例では、球磨川流域に線状降水帯が11時間半にわたって停滞する、異例の長さの継続時間となっていたことがわかりました。また、筑後川の上流域では、7月6日正午から7月8日正午までの48時間に3事例の線状降水帯が発生していました。平成30年7月豪雨では、東海以西の広い範囲で15事例の線状降水帯が発生しましたが2) 、今回は九州地方だけで平成30年7月豪雨に匹敵する線状降水帯が確認されました。
リンク:
球磨川周辺の線状降水帯動画 https://youtu.be/JKJyDsF1BWc
リンク:
筑後川周辺の線状降水帯動画 https://youtu.be/tWWxZVKEYp0
2. 計画降雨量との比較
被害(決壊、越水、溢水等)のあった球磨川、筑後川について、国土交通省解析雨量3)から流域平均降雨量を算定4)し、計画降雨量5)との比較を行いました(表1、表2)。
- 球磨川では、12時間雨量最大値は361ミリ(横石地点)で、計画降雨の261ミリを大幅に超えていました。また、12時間雨量最大値の期間(7月3日21時~4日9時)と線状降水帯継続期間(7月3日23時20分~4日10時50分)がほぼ一致していました。
- 筑後川では、7月6日~7日の2日間雨量は554ミリで、計画降雨521ミリと同程度でした。
3. 既往最大雨量との比較
7つの指標(3時間雨量、6時間雨量、12時間雨量、24時間雨量、48時間雨量、72時間雨量および土壌雨量指数)の既往最大比の最大値を算出し、災害との関連を調べました。
球磨川流域では12時間雨量で既往最大比120%を超えていました。また、九州北部では48時間雨量で既往最大比120%を超えていました。九州各地の被害発生箇所の多くで、各継続時間雨量または土壌雨量指数のいずれかで既往最大値に匹敵または超過する雨量となっていました。
4.まとめ
九州地方では13事例の線状降水帯が発生し、このうち球磨川で氾濫が発生した事例では線状降水帯が11時間以上継続しました。
球磨川では計画降雨を超える雨量となりました。筑後川では、計画降雨と同程度の雨量となりました。
球磨川流域では12時間雨量で既往最大比120%を超過、九州北部(筑後川流域など)では48時間雨量で既往最大比120%を超過しました。九州各地の被害発生箇所の多くで、各降雨継続時間雨量または土壌雨量指数のいずれかで既往最大値に匹敵または超過する雨量となっていました。
本件に関する詳細資料を作成しています。あわせてご確認ください。
■令和2年7月豪雨における大雨の特徴 -線状降水帯、異例の11時間以上継続-
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また、日本気象協会が推進している「トクする!防災(R)」(https://tokusuru-bosai.jp/)プロジェクトでは、備蓄や避難の心得をご紹介しています。
報道などで大きな気象災害への注意がなされる際の情報源として、活用ください。
補足事項
1) 線状降水帯の抽出条件:
① 3時間積算降水量が80mm以上の分布域が線状(長軸対短軸の比が2以上)
② その面積が500平方キロメートル以上
③ 上記①の領域内の3時間積算降水量の最大値が100mm以上
※ 抽出後に時空間的な連続性が高いものは同一のものとみなす
2)気象庁報道発表「平成30年7月豪雨」及び7月中旬以降の記録的な高温の特徴と要因についてhttps://www.jma.go.jp/jma/press/1808/10c/h30goukouon20180810.pdf
3) 国土交通省解析雨量:解析雨量は国土交通省水管理・国土保全局、道路局と気象庁が全国に設置しているレーダー、アメダス等の地上の雨量計を組み合わせて、1時間の降水量分布を1km四方の細かさで解析したもの。(出典:気象庁HP)
4) 流域平均降雨量の算出方法について:国土交通省解析雨量(1kmメッシュ)を用いて、基準点より上流を対象に流域界で囲まれるメッシュを算術平均したもの。
5) 計画降雨量:河川整備において、超えることがあってはらない降雨量を設定したもの。この規模の雨が降っても氾濫(はんらん)が発生しないように治水対策が進められている。その降雨量は大雨事例を基に、確率計算により求める方法が一般的で、1/100~1/200確率降雨量としている。
<ご参考>
(防災レポート Vol.4)梅雨前線に伴う今後の大雨の見通し(速報)
https://www.jwa.or.jp/news/2020/07/10426/
(防災レポート Vol.3)梅雨前線に伴う今後の大雨の見通し(速報)
https://www.jwa.or.jp/news/2020/07/10414/
(防災レポート Vol.2)熊本豪雨の降水量の特徴と今後の見通しについて(速報)
https://www.jwa.or.jp/news/2020/07/10378/
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