防災レポート2022 Vol.8 台風第14号に伴う今後の大雨・災害の見通し(第4報)
Report
日本気象協会は、台風第14号に伴う今後の大雨と災害の見通し(9月18日12時時点)に関する情報を、防災レポートとして発表します。
ポイント
・台風第14号は北上し、きょう18日には非常に強い勢力で九州に接近・上陸する見込み。
・九州地方では48時間降水量が800mmを超え、既往最大比150%超の大雨となるおそれがある。
・普段雨が多くない中国地方でも48時間降水量が600mmを超え、既往最大比150%超となるおそれがある。
・九州、中国、四国、近畿地方では、暴風や高波・高潮による浸水害への備えが必要。
非常に強い台風第14号は18日(日)12時現在、屋久島付近にあり、時速25kmの速さで北北西へ進んでいます。中心気圧は930hPa、中心付近の最大風速は45m/sとなっています。きょう18日(日)昼過ぎから夜遅くにかけて、勢力を維持し九州南部にかなり接近または上陸するおそれがあります。すでに鹿児島県に暴風、波浪、高潮の特別警報が発表されています。
台風はその後、19日(月)には九州北部周辺で進路を東向きに変えて、西日本を縦断する予想となっています。台風の進行速度が遅く、そのため長時間にわたって大雨や暴風の影響が出るとともに、中国・四国地方などでは雨量が多くなる可能性があります。西日本の広い範囲で、大雨や暴風に加え、土砂災害、沿岸部では高潮や高波に警戒が必要です。
日本気象協会独自の「JWAアンサンブル雨量予測」では、台風第14号の影響により、宮﨑県、熊本県、鹿児島県で20日(火)にかけての48時間雨量の最大値が800mmを超えて、既往最大比(※1)150%を上回る可能性があります(※2)。また、台風の進路にあたる九州北部や中国地方でも、20日(火)にかけての48時間雨量の最大値が600mmを超える予測となっています。特に、中国地方は普段から雨が少ない地域でもあるため、既往最大比が150%を超える可能性があります。日本気象協会と静岡大学牛山素行教授との共同研究の結果(※3)によると、既往最大比150%を超えると犠牲者の発生数が急増する可能性があり、災害発生危険度が極めて高いことから厳重な警戒が必要です。
表1は、九州地方、中国地方の国管理河川のうち、河川の流域平均雨量の予測値が計画規模降雨(※4)を超えているものを示したものです。九州南部では18日(日)~19日(月)にかけて、九州北部や中国地方では19日(月)~20日(火)にかけて、国管理の大きな河川を含め、多くの河川で現状の整備水準を超える規模の雨量が広範囲に予測されており、氾濫が発生するおそれがあります。市町村が作成している洪水ハザードマップなどを早めに確認し、浸水の可能性や避難する場所・経路などを把握するとともに、避難への備えを行ってください。なおここでは示していない河川でも氾濫が発生するおそれもありますので、最新の気象情報や河川情報を確認するようにしてください。
台風接近により暴風にも警戒が必要です。瞬間風速25m/s以上となる確率は、18日(日)、19日(月)に九州地方の広い範囲で70%を超えています。また、四国地方や中国地方でも18日(日)夜間~19日(月)夜間にかけて、所々で70%を超える確率になっています。暴風への備えは早めに済ませるようにしてください。交通機関の乱れも予想されます。こまめに気象情報や交通情報を確認するようにしてください。
また、台風第14号は、中心気圧が930 hPaと非常に強い勢力で九州に接近・上陸する見込みで、台風の進行方向と湾の軸が一致する可能性が高い鹿児島湾、有明海・八代海、瀬戸内海では、高波・高潮による浸水害への備えが必要です。高潮は台風接近時に「気圧低下による吸い上げ効果」、「強風による吹き寄せ効果」、「高波による水位上昇」により発生します。
本情報は2022年9月18日(日)12時時点の予測資料から作成したものです。最新の気象情報をご確認ください。
※1 既往最大比とは、解析雨量が1kmメッシュ化された2006年5月以降に観測された雨量の最大値との比のこと
※2 既往最大値の集計期間は2006年5月以降のため、2005年台風第14号の大雨は含まれていないことに留意してください。
※3 本間基寛,牛山素行:豪雨災害における犠牲者数の推定方法に関する研究,自然災害科学,Vol. 40,特別号,pp. 157-174,2021.
※4 計画規模降雨:河川整備の目標とする降雨。この規模の雨が降っても氾濫(はんらん)が発生しないように治水対策が進められている。その降雨量は大雨事例を基に、確率計算により求める方法が一般的で、1/100~1/200確率降雨量としている。
※日本気象協会の天気予報専門メディア「tenki.jp」では、「警報・注意報」「地震情報」「津波情報」「火山情報」「台風情報」などの防災情報(https://tenki.jp/) を24時間365日提供しています。
安部 智彦(あべ ともひこ) 一般財団法人 日本気象協会 社会・防災事業部 防災マネジメント課 副課長 技術士(建設部門:河川、砂防及び海岸・海洋) 技術士(総合技術監理部門、建設部門) 気象予報士 |
当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、取引の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。本資料のご利用に際しては、ご自身の判断にてなされますようお願い申し上げます。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。本資料の全文または一部を転載・複製する際は著作権者の許諾が必要ですので、当社までご連絡ください。商品ごとの情報やコンサルティングにつきましても当社までお問い合わせください。