(日射量レポートVol.5)「2023年の日射量」
~2023年の日射量は例年と比べて全国的に「やや多い」傾向~
Report
日本気象協会では、2015年から毎年、日本全国の年間日射量を地域別にまとめた「日射量レポート」を発表しています。今年も「2023年の日射量」レポートを発表します。今年は気象庁の観測地点(全国46地点)の日射量観測値に基づき分析を行いました。「日射量」という視点から、2023年がどのような1年だったかを早速振り返ってみましょう。
1.2023年は、どのような年だったのか
日本気象協会は、2023年12月に日本気象協会所属の気象予報士のうち118名が選ぶ「2023年お天気トレンド大賞」を発表しています(図1)。
2023年は「記録的猛暑」「長すぎた残暑」などのキーワードがランクインしているように、高温に関するニュースが目立った年になりました。夏季の全国的な記録的猛暑に加え、3月は高温により観測史上最も早く桜が開花した地点もありました。梅雨の時期には、梅雨前線の影響で大雨となった地域がありました。特に7月7日から10日にかけては、九州地方を中心に大雨となり、7月10日には福岡県と大分県に大雨特別警報が発表されました。一方、台風の年間発生数は17個と少なく、上陸したのもわずか1個でした。
2.2023年の日射量まとめ
表1に「2023年の日射量」をまとめました。全国46地点の気象庁による全天日射量の観測値※1をもとに分析しています。オレンジ色の部分は例年※2または前年(2022年)の日射量と比べて「かなり多い」「多い」「やや多い」地域、青色の部分は「やや少ない」地域、白色の部分は例年並(または前年並)を表します。
※1 地表面が受ける太陽からのエネルギー量。
※2 例年の日射量:過去10年(2013年~2022年)の年間日射量の平均値。
2023年は、例年と比較して、北海道日本海側を除き、日本全国で「やや多い」傾向となりました。前年(2022年)と比較しても「やや多い」地域が多かったものの、前年も日射量が多い傾向にあった中国、四国、九州地域では「やや少ない」地点も見られました。
3.2023年の日射量 月変化
気象庁の日射量観測データにより作成した、札幌、仙台、東京、大阪、福岡、那覇を対象とした日射量の月変化(2023年、前年、例年)を図2に示します。また、地域別・月別の日射量の例年比、前年比を表2、表3に示します。例年比で特徴があった7月、8月、10月について、気象状況や日射量の特徴を振り返ります。
7月
7月上旬~中旬にかけては、本州付近に梅雨前線が停滞した影響で、日本海側を中心に曇りや雨の日が多くなりました。一方で、下旬になると、東日本・西日本の太平洋側を中心に太平洋高気圧に覆われ、晴れる日が続きました。その結果、東日本の日本海側、太平洋側ともに7月下旬としては1961年の統計開始以来1位の日照時間を記録しました。東京の7月の日射量は、例年と比べて1.34倍、前年と比べて1.25倍となりました。
8月
北日本・東日本を中心に高気圧に覆われることが多く、晴れて気温の高い日が多くなりました。北日本・東日本では、1946年の統計開始以来8月として1位の記録的高温となりました。また、北日本・東日本では日照時間、日射量も多くなり、仙台の8月の日射量は、例年と比べて1.44倍、前年と比べて1.58倍となりました。一方、沖縄や奄美などでは、例年よりも日射量が少ない傾向がみられました。
10月
全国的に高気圧に覆われ晴れることが多かったため、例年よりも日射量が多い傾向が見られました。東京、横浜、熊谷、千葉を含む9地点では、10月の月間日照時間の多い記録を更新しました。日射量も同様に多くなり、10月の東京の日射量は、例年と比べて1.34倍、前年と比べても1.36倍となりました。
4.日本気象協会の太陽光発電事業者向けサービスについて
本レポートでは気象庁の観測地点(全国46地点)を対象に日射量の傾向を分析しましたが、日本気象協会ではひまわり8・9号による水平解像度0.5kmメッシュの日射量推定サービス(SOLASAT 9-Now)も別途展開しています。また、アメダス地点の日照時間による日射量推定サービス(アメダス推定日射量)、独自気象モデルによる日射量・太陽光発電出力予測サービス(SYNFOS-solar)、ひまわり8・9号データによる日射量予測サービス(SOLASAT 9-Nowcast)なども展開しています。これらの推定・予測情報は、太陽光発電事業に関わる幅広い分野で活用いただいています。
今回ご紹介した「2023年の日射量」レポートを太陽光発電や農業分野などの事業者の皆さまに参考情報としてご提供することで、ビジネス活動の活性化を支援いたします。
日射量・太陽光発電出力予測 SYNFOS-solar
https://www.jwa.or.jp/service/energy-management/solar-power-05/
ひまわり8・9号による日射量推定サービスSOLASAT 9-Now
https://www.jwa.or.jp/service/energy-management/solar-power-13/
ひまわり8・9号による日射量予測サービスSOLASAT 9-Nowcast
https://www.jwa.or.jp/service/energy-management/solar-power-12/
アメダス推定日射量
https://www.jwa.or.jp/service/energy-management/solar-power-02/
※本レポートの年間日射量の比較に関する用語
かなり多い :例年(前年)の+10%以上
多い :例年(前年)の+6~+10%
やや多い :例年(前年)の+2~+6%
並 :例年(前年)の-2~+2%
やや少ない :例年(前年)の-2~-6%
少ない :例年(前年)の-6~-10%
かなり少ない:例年(前年)の-10%未満
<過去発表した「年間日射量」の傾向資料について>
2015年 ( 2016.2.29 https://www.jwa.or.jp/news/2016/02/4564/ )
2016年 ( 2017.1.19 https://www.jwa.or.jp/news/2017/01/4421/ )
2017年 ( 2018.1.31 https://www.jwa.or.jp/news/2018/01/4298/ )
2018年 ( 2019.1.31 https://www.jwa.or.jp/news/2019/01/4202/ )
2019年 ( 2020.3.11 https://www.jwa.or.jp/news/2020/03/9493/ )
2020年 ( 2021.4.14 https://www.jwa.or.jp/news/2021/04/12959/ )
2021年 ( 2022.4.7 https://www.jwa.or.jp/news/2022/04/16357/ )
2022年 ( 2023.4.14 https://www.jwa.or.jp/news/2023/04/20095/ )
一般財団法人 日本気象協会 環境・エネルギー事業部 エネルギー事業課 グループリーダー 気象予報士 宇都宮 健志(うつのみや けんじ) 名古屋大学大学院工学研究科(社会基盤工学専攻) 修士課程修了 日射や太陽光関連のデータ解析、技術開発、コンサルタント業務に従事している。 |
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